【7月9日 東方新報】中国最高級の白酒「国酒茅台」が7月1日、「貴州茅台」に改名した。中国のSNS・微博(Weibo)の公式アカウントからも茅台酒の公式サイトからも「国酒」の表記はひっそりと消えていた。「国酒」の商標登録を目指して過去17年の間に9回申請していたが、すべて却下され、ついに諦めた格好だが、「国酒」ブランドに頼らずとも、味と品質で勝負していけるという自信をもったともいえるかもしれない。

 茅台酒は1972年、当時の田中角栄(Kakuei Tanaka)首相の訪中時の宴席で出され、周恩来(Zhou Enlai)首相と乾杯した酒として日本でも知られるようになった白酒の代名詞。国家的政治イベントや外国の賓客を招いたパーティーなどでは必ず供され、事実上の「国酒」扱いをされてきた。

 貴州茅台酒集団(Kweichow Moutai Group)はこれまで「国酒茅台」を名乗り、2001年秋以降、この「国酒」の称号の独占的使用を求めて商標登録を目指してきた。2012年7月に初審をクリアしたが、四川省(Sichuan)の五糧液(Wuliangye)や山西省(Shanxi)の汾酒(Fenjiu)などのライバル社が異議を申し立てたこともあった。国家商標審査委員会は「公平な市場競争にマイナスの影響を与える」として登録申請を却下したが、それ以降も茅台集団は「国酒」商標登録に執着していた。

 だが、習近平(Xi Jinping)政権がスタートすると、官僚の職務規定として「贅沢(ぜいたく)禁止八か条」が打ち出され、徹底した腐敗撲滅キャンペーンが推進されると、贅沢の象徴であり、賄賂替わりの贈答品にも使われてきた茅台酒のイメージが失墜。官僚の「高級接待」が激減して、値段も一時は半額にまで落ち込んだ。

 おりしも、最高人民検察院の公式サイトによれば、汚職の疑いで取り調べを受けていた茅台集団の元会長、袁仁国(Yuan Renguo)容疑者が6月27日、起訴された。検察によれば、袁被告は貴州省(Guizhou)茅台酒廠副廠長をはじめ、茅台酒集団での職務上の立場を利用し、他人への利益を供与する代わりに、巨額の賄賂を受け取っていたという。茅台集団としてはこうした汚職のイメージを払拭(ふっしょく)することが先決という判断のようだ。

 贅沢禁止令や反腐敗で一時売り上げが落ちていた茅台酒も、プレミア価格が適正価格に落ち着いたこともあり、中間層という新たな市場を開拓。2014年、2015年は増益率1%に落ち込んでいたが、2018年の最終利益は30%増となり、株価も今年に入って急上昇している。(c)東方新報/AFPBB News