【3月7日 AFP】俳優として大スクリーンに映る夢を抱きつつインターネットの世界に生きるイタリアの若者8人は、ミラノの高級メゾネットで過ごす日常を動画アプリ「ティックトック(TikTok)」に投稿し、多くのフォロワーを集めている。

 16歳から20歳までのインフルエンサーが歌や踊り、不満顔まで披露する舞台は、仮想世界のスター養成所「デフハウス(Defhouse)」だ。

 床面積500平方メートルのメゾネットは色鮮やかに塗られ、出窓と大きなテラス、そしてジェットバスが備わっている。ティックトックに投稿する短編動画の背景として完璧だ。

 彼らの踊りやコメディー、歌っている様子に引かれてこの人気動画アプリにアクセスするフォロワーは合わせて1600万人。だが彼らの住所は厳重に秘密にされている。

■これって才能?

 以前は経営学を学ぶ大学生だったシモーネ・ベルリーニ(Simone Berlini)さん(20)は「ミラノの街を歩いていると、みんなが僕に気が付くんです」と語った。昨年10月にデフハウスが開設して以来、ベルリーニさんのティックトックのフォロワーは倍増して270万人に達した。ベルリーニさんにとって、この養成所は今後のキャリア、できれば俳優になるための足掛かりだ。

 デフハウスの設立者ルカ・カサディ(Luca Casadei)氏(44)は、ティックトックの動画の内容に最初は懐疑的だったとAFPに明かした。

「最初は全く確信がありませんでした。音楽に合わせて唇を動かすだけで歌いもしないなんて、何の才能も要らないように思えました」とカサディ氏。同氏は自らが創業し、最高経営責任者(CEO)を務める「ウェブ・スターズ・チャンネル(Web Stars Channel)」を通じて、多数のイタリア人をオンラインタレントとして売り出した。

 米ロサンゼルスでは、同様の構想はすでに「ハイプハウス(Hype House)」などいわゆる「コンテンツハウス」としてすでに試されている。コンテンツハウスは、インフルエンサーらがクリエーティブな拠点で集団生活をし、1990年代後半から2010年ごろまでに生まれた「ジェネレーションZ」向けのコンテンツを続々と制作している。

 だがカサディ氏はその構想をさらに一歩進め、養成所にしたいと考えた。「ティックトック世代の若者は政治について何も知らず、知識を得ようともせず、集中力といえば金魚並みです」とカサディ氏は言う。

 インフルエンサーは全員がここに暮らし、最年少の若者はまだ学校に通っている。彼らは音楽や文化から政治、時事問題、話し方から行儀作法に至るまで、動画制作で使うことになるかもしれない多種多様な分野の訓練を受ける。