【3月4日 AFP】国際刑事裁判所(ICC)は3日、中東パレスチナでの戦争犯罪をめぐる正式捜査を開始した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は、直ちに「反ユダヤ主義そのものの決定」だと非難した。

 一方のパレスチナ当局は、2014年6月からイスラエルによる封鎖が続くパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)や、イスラエルの占領下にある東エルサレム(East Jerusalem)とヨルダン川西岸(West Bank)の状況についての「緊急かつ必要な」捜査だとして、ICCのファトゥ・ベンスダ(Fatou Bensouda)主任検察官の決定を歓迎している。

 米政府は、ICCの決定に「失望した」と発表し、同盟国イスラエルへの支持を表明。ネッド・プライス(Ned Price)米国務省報道官は、捜査に「断固反対する」と述べた。

 アフリカ・ガンビア出身のベンスダ氏は、2014年夏にイスラエル軍がガザ地区で行った軍事作戦を中心に捜査を行うと発表。イスラエルとパレスチナの双方に、戦争犯罪と「認定される可能性のある複数のケース」があると指摘した。この軍事作戦でパレスチナ側は民間人を中心とした約2250人、イスラエル側は兵士を主とする74人が死亡した。

 ベンスダ氏は「最終的にICCが重視するのは、パレスチナとイスラエル双方の戦争犯罪の犠牲者でなくてはならない。戦争犯罪は、長きにわたる暴力と不安定な状態の悪循環から生じ、すべての当事者に深い苦しみと絶望をもたらしてきた」と説明。正式捜査は「入念な」5年間の予備調査に続くもので、「独立して公平かつ客観的に」実施されると言明した。

 ICCは、戦争犯罪などを行った個人を国際法に基づき裁くため2002年に発足した。イスラエルは加盟していないが、パレスチナは2015年に加盟している。

 イスラエルのガビ・アシュケナジ(Gabi Ashkenazi)外相は、「自国の市民と兵士を法的な迫害から守るため、必要な措置はすべて講じる」と表明し、すでに行き詰まっている中東和平交渉にも影響が出かねないと警告した。

 ICCは、2018年以降のパレスチナ人によるデモで死者が出ている状況についても、捜査対象に含める可能性を示唆している。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争(6日間戦争)でヨルダン川西岸とガザ地区を占領し、その後、アラブ系住民が多く住む東エルサレムを併合した。国連(UN)によれば現在、イスラエル占領下に少なくとも500万人のパレスチナ人が暮らしている。(c)AFP/Danny KEMP