【2月21日 AFP】セルビア北部にある軍事品のスクラップヤードには、週末になると「音」を探しに来る人がいる──。

 使われなくなったライフルやヘルメット、ミサイルなどを棒で軽くたたいたり、息を吹きかけたり、こぶしでコツコツと触れてみたりするのは、芸術家のニコラ・マツラ(Nikola Macura)さん(42)。テメリン(Temerin)のスクラップヤードを訪れ、楽器に作り替えられそうな古い軍事品を物色しているのだ。

 バルカン半島一帯には、旧ユーゴスラビアの解体をもたらしたかつての紛争の傷跡がいまだに残っている。「銃は至る所にある。私たちはずっと破壊に囲まれていたので、その存在にもはや気付かない」と述べるマツラさんは、破壊のために使われていた道具から、創造のための道具を作り出す活動を続けている。

 これまでに完成させた楽器には、バズーカ砲と燃料タンクを使ったチェロ、ライフル「ザスタバM70(Zastava M70)」と兵士のヘルメットを使ったギター、アサルトライフルの弾倉と救急キットを組み立てたバイオリンなどがある。

 セルビア北部ノビサド(Novi Sad)の芸術学校で助教を務めるマツラさんの目標は、元兵士らも奏者として参加するオーケストラの編成と、そのオーケストラで地域を回り演奏することだ。

 次のプロジェクトでは、戦車を改造して5人で演奏するピンク色の打楽器を作る予定だと話すマツラさん。「戦車から楽器を作ることは…ライフルから楽器を作るのと同じ。難しい」と笑った。(c)AFP/Miodrag SOVILJ