【2月3日 東方新報】日本では年末になると「来年の干支(えと)は○年です」という話題が増えるが、年が明けてしばらくすると忘れられがちだ。中国では干支はその人の性格や人生に影響するほど重要視され、帝王切開をしてでも子どもの出産時期を希望の干支に合わせる家庭も多い。干支は西暦でなく旧暦(太陰暦)で区切られ、今年は春節(旧正月、Lunar New Year)の2月12日から丑(うし)年がスタートする。

 日本では血液型で人の性格をみることがあるが、中国では干支でその人の性格を判断することも多い。「ネズミ」の子(ね)年は「賢くて適応能力が高い。好奇心旺盛な半面、だまされやすい」、「竜」の辰(たつ)年は「エネルギッシュで人を導く才能がある。夢を追いかけやすく、自信過剰な面も」といった具合だ。

 日中の比較でよく言われるのが、亥(い)年と言えば日本ではイノシシなのに対し、中国では豚。イメージが悪いかというと真逆で、「豚は子だくさん=金持ちになる」といわれている。午(うま)年はイメージの良い「馬」で人気が高く、翌年の未(ひつじ)年の「羊」は「おとなしく頼りない」印象がある。そのため、巳(み)年になると両親が子どもに「早く結婚して来年のうま年に子どもを産んでくれ。ひつじ年の子どもはいらない」と見合いを迫る、戌(いぬ)年で中国人の妻が日本人の夫に「来年の亥(い)年に絶対子どもを産みたい」といって連日子作りを求める、という話を聞く。

 中国では長年、一人っ子政策が続いたため、「一度だけの出産なら痛みがない方がいい」と帝王切開を選ぶ女性が多い。このため産婦人科では旧正月の前後で、縁起が良い干支の年の終わりに帝王切開の手術ラッシュが起き、旧正月になると病棟がガラガラになるということも珍しくない。

 これから「新年」の干支となる牛は、中国では「勤勉」のイメージがある。牛は農業の最初のパートナーであり、中国の古典には「牛は農業の根本なり」と記述されている。万物を生み出す源のため、漢字の「物」は牛へんになったという。「犠牲」が牛へんなのも、牛が聖なる生き物で重要な儀式のいけにえに使われたため。現在の中国でも「牛」は口語で「すごい」を意味する。ただ、農業技術の進歩で歴史的に牛の役割が低くなるにつれ、「鈍重」のようなマイナスイメージも増えた。

 太陰暦は月の満ち欠けの周期(平均29.5日)で計算するため、12か月では365日に足りず、13か月では超えてしまう。そのため年によって「閏(うるう)月」を入れて調整する。今年のうし年は閏(うるう)月がないため、「今回のうし年が2月12日から(2022年)1月31日までの354日しかない」ということが中国のインターネット上で話題になっている。うし年翌年の寅(とら)年は、虎に「どう猛」なイメージがあり毎回出産数が少ないため、今年も「うし年のうちに急いで子どもを産まないと」という夫婦もいることが予想される。一方で「同年代に子どもが少ないと、受験や就職で有利」と合理的に考える家庭もあり、干支をめぐり各家庭が「戦略」を練っている。

 中国で干支の話題というと、1970年代前半、「竜は想像上の生き物で科学的ではない」として、政府が辰年を「パンダ年」に置き換えようとしたことがある。竜は歴史的に皇帝の象徴で社会主義国家にふさわしくないという考えもあった。しかし世の中にほとんど浸透せず、すぐに干支は辰に戻った。国民的動物のパンダといえど、古代から伝わる十二支に割って入るのは難しかったようだ。(c)東方新報/AFPBB News