■「残酷な力」

  ロシアの検察当局は昨年7月、登山グループは雪崩で死亡し、大半の死因は低体温症だったと結論付けた。それでも疑問が残った。

 あれほど緩い斜面でどのように雪崩が起きたのか。テント設営から何時間も経てどのように雪崩が起きたのか。グループの数人が雪崩では通常みられない外傷を負ったのはなぜか。

 2人の研究者は分析モデルを作成し、犠牲者らがテントを設営した環境条件下で発生するスラブ(硬く板状になった雪の層)雪崩を示した。これによると、一行は凍った地面を切り出してキャンプを設営するに当たり、知らずして脆弱(ぜいじゃく)な雪の層の上に設営してしまった可能性がある。

 また夜の間に、テント設営地点の上方にあったスラブに風で運ばれた雪がさらに積もったのだろう。研究者らは、設営から9時間半~13時間半後に雪崩が発生したと推定している。

 調査はさらに、雪崩発生時に登山者らが横になっていたと仮定して生じ得る外傷のシミュレーションも行い、それが検視報告と一致していることを確認した。

 ゴーム氏は「私が関わった中で、最もエキサイティングな仕事だった」と語った。「気分はまるで探偵だ!」。ただし自分たちが謎の全容を解明したわけではないと強調した。

 また登山者たちが負傷した仲間を助けながら森に向かおうとした痕跡についてこう述べた。「残酷な自然の力と向き合った中での、素晴らしい勇気と友情の物語だと思う」 (c)AFP