【1月29日 東方新報】中国で子どもの進学を巡る詐欺事件が後を絶たない。中国は日本以上に受験競争が激しく、学歴が重視される傾向が依然と強く、親や子どもの心理に付け込む手口が横行している。

 昨年12月23日、山東省(Shandong)臨沂市(Linyi)河東区(Hedong)で、有名小学校への入学を巡る詐欺をはたらいた疑いで王容疑者が逮捕された。

 王容疑者は2017年、飲み会で知り合った公務員の張さんに「自分は学校方面に強い人脈がある」と主張。張さんは、子どもを地元の有名小学校に通わせたがっていた友人の李(Li)さんに王容疑者を紹介。王容疑者の要求に基づき1万2000元(約19万円)を手渡した。さらに張さんの知人の公務員、艾(Ai)さんも、子どもの入学を依頼して1万6000元(約26万円)を支払った。

 中国では何事も人脈が重視される。ビジネスや行政手続きにおいて正面から難航しても、地縁や血縁、学閥など何らかのコネがあれば一気に解決することも多い。逆にそうしたつながりがないと物事が進まない場合もあり、金品を贈って関係をつくることも珍しくない。

 しかし2018年9月の入学シーズンを迎えても子どもたちに入学通知が来なかった。李さんらが王容疑者を問い詰めると、「手続きに時間がかっている」「入学できなくともお金は返さない」などと繰り返したため、詐欺と気付いた。李さんらの通報を受けた警察が捜査を続け、王容疑者を逮捕。詐欺容疑を認めているという。

 湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)では2019年、受験生に「有名大学に合格した」と偽り、実際にキャンパスで授業を受けさせる手の込んだ詐欺事件が明るみに出た。

 広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)南寧市(Nanning)の高校生の李さんは全国統一大学入試「高考(Gaokao)」を受験。成績は470点で、レベルにあった地元の大学へ進むもうとしたところ、武漢市の有名大学の職員を名乗る男から「私のコネで、特別ルートで入学できる。他の学生と同じ授業を受け、卒業証書を取得できる」と電話がかかってきた。李さんが依頼すると、8月に大学から入学通知が届いた。李さんは用意された学生寮に住み、学生証も受け取り、9月から実際にキャンパスの教室で授業を受けた。しかし専攻がバラバラな学生が同じ授業を受けており、授業も教室からすぐマンションに変更された。食堂や図書館の利用カードは受け取れず、職員を名乗る男は「君たちは特別ルートの学生だから」と説明された。1年生の2月期になると授業自体が減り、「金を払えば単位は取得できる」と言われるように。嫌気を起こした李さんはその後、「退学」を選んで地元に帰った。「怒りと後悔」で半年間、自宅にこもり続けたという。

 その後、学生らが警察に通報し、李さんらをだました30代の袁容疑者は逮捕された。教育関係の仕事をしていた経験がある袁容疑者は大学側から教室の一室を6万元(約96万円)で借り受け、アルバイトで雇った大学院生らを大学教師として装い、授業をしていた。袁容疑者は21人の若者から計96万元(約1537万円)をだまし取っていた。被害者は山西省(Shanxi)、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)、陝西省(Shaanxi)など地方の若者が多かった。袁容疑者は詐欺罪で懲役12年の実刑判決を受けている。

 詐欺の手口は枚挙にいとまがなく、本番前に「試験問題」の販売をもちかけたり、自称ハッカーが「高考の点数を改変できる」と勧誘したり。さらには、存在しない大学を捏造(ねつぞう)し、学生を募集する詐欺まで存在する。人民日報が発表したニセ大学一覧表によると、「中国郵電大学」「北京経済貿易大学」「南京工商大学」など、実際に存在する大学名に似せた名前が並ぶ。ニセ大学のホームページは多くが海外のサーバーに置かれ、「合格」後に入学金や学費として数万元を銀行口座に振り込ませると、そのままナシのつぶてというパターンが多い。都会にあこがれながら正確な情報は乏しい農村部や貧困地域の学生らがターゲットにされている。だまされた親や受験生が「恥をさらしたくない」と泣き寝入りするケースも多い。

 教育部や各大学は「詐欺にだまされないで」と繰り返しているが、実際に有名大学の幹部職員が何年にもわたり、合否判定に便宜を図る見返りに多額の金品を受け取っていた事例が発覚している。また、大学に通う学生自身が「父親のコネで入学した」と「自慢」する話はよく聞く。

 中国で毎年6月に行われる「高考」は、点数によって志望校・学科への進学の可否が決まるシステムだ。学歴は就職先に直結するので、高考は「人生を決める一発勝負」といえる。「金で点数や入学が『買える』」という観念が社会に広がっている限り、そこに付け込んだ詐欺は今後も続きそうだ。(c)東方新報/AFPBB News