発展のスピードを加速する中国の高速鉄道 総距離は新幹線の10倍以上、一方で負債リスクも
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【1月27日 東方新報】中国の高速鉄道は2007年に産声を上げて以来、2020年末で営業距離は世界一の3万8000キロに達し、わずか13年で日本の新幹線の10倍以上の鉄道網を築き上げた。現在の世界最速の営業速度350キロをさらに400キロに引き上げ、2035年には営業距離を7万キロにする計画だ。一方で、急激な延伸工事が巨額債務を生み出すという指摘もある。
国有企業の中国国家鉄路集団は2020年8月、「2035年までに鉄道網の営業距離を20万キロに延伸し、このうち高速鉄道は7万キロにする」と計画を発表した。高速鉄道には中国の全地球衛星測位システム「北斗(Beidou)3号」や5G技術、新型スマート列車制御システムなどを通じてインテリジェント化を進める。北斗3号は2020年に全面運用を開始して以来、既に高速鉄道の建設工事の3次元測量に使われ、従来の精密測量に比べ効率が20倍以上も向上している。同社は「北斗3号や5G技術により列車間の測位が正確になり安全面が強化され、鉄道輸送能力が30%向上し、省エネ化も進む」としている。
2020年12月には、中国の鉄道車両大手の中国中車(CRRC)傘下の中車唐山が、国際線専用の軌間可変列車を公開した。標準軌、広軌、狭軌など各国の異なる鉄道規格にすべて対応し、標準時速400キロで走行するという。国内の高速鉄道でも400キロの営業運転を目指し、研究が進んでいる。中国では2011年1月、高速鉄道の試験走行で世界最速の487キロを記録している。速度を出すだけなら400キロ走行は技術的に可能だが、車両の揺れ、車両内の気圧変化、騒音をクリアする必要がある。電力消費や二酸化炭素の排出を抑えることも課題だ。それでも、世界各国への輸出が見込める高速鉄道の開発は国策プロジェクトであり、中国政府が掲げる「交通強国」へ向けて研究は進んでいくとみられる。
一方で、高速鉄道の債務に対する懸念もある。北京交通大学(Beijing Jiaotong University)の趙堅(Zhao Jian)教授は「2018年9月時点で中国の鉄道の負債総額は5兆2800億元(約84兆5492億円)に上る。地方幹部が高速鉄道建設で経済成長を達成しようとして、債務返済を考えず投資をしている」と指摘。高速鉄道は一部のドル箱路線を除いて客数が少なく、輸送能力が過剰となり採算が取れていないという。高速鉄道は1キロ延伸するのに1億3000万元(約20億8170万円)かかり、2035年までに3万5000キロ伸ばすとすると4兆5500億元(約72兆8596億円)の投資が必要となる。国家鉄路集団は延伸工事の費用を調達するため社債を発行し、中央政府や地方政府が多額を引き受けることになる。趙堅教授は「高速鉄道は既に『灰色のサイ』になっている」という。不断はおとなしいサイもいったん暴走すると誰も止められないという金融業界のたとえで、高速鉄道の潜在的リスクを指摘する。
ただ、鉄道建設は地方の雇用を創出し、関連産業を育てて景気を下支えする効果は大きいのも間違いない。中国の高速鉄道は、輝かしい経済成長の可能性とリスクを搭載しながら、その発展のスピードを上げていく。(c)東方新報/AFPBB News