【1月21日 東方新報】中国が独自に開発を進めている高温超電導リニアモーターカーの試作車両が今月13日、四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)で完成した。設計上の時速は最速620キロ。将来的にはSFの世界のような「真空チューブ」技術とリニアの磁気浮上技術を組み合わせ、音速を超える時速1500キロのスピードを目指している。米テスラ(Tesla)も「高速チューブリニア」の実現を目指しており、時代は「音速リニア」の世界に向かっている。

 成都市の試作車両は、1980年代からリニア研究を続けている西南交通大学が中心となって開発。カーボンファイバー100%の軽量車体に空気抵抗の少ない先端部など、最新の技術、設計を採用している。大学の国家重点実験室に設けた165メートルの実験用区間で、車両の浮上、誘導、けん引、ブレーキなどの基本機能試験を行う。

 中国のリニアといえば、最高商業速度430キロを誇る上海市内のリニアが有名だ。ただ、上海リニアは、中国が長距離交通網を全土に整備する際、日本の新幹線のような高速鉄道かリニアにするか検討するために試験的に導入された面があった。上海リニアはドイツの技術を採用している。結局、リニアは高速鉄道の3倍ほどのコストがかかり、技術的な難題もあるため、高速鉄道が採用された。今や高速鉄道網は全土で約3万キロに達し、車体やシステムの国産化が進み、営業最高速度350キロの路線もある。逆に上海リニアは新型コロナウイルスによる需要減などの影響で、営業速度を300キロに落としている。

 いわば高速鉄道に「軍配」が上がった中で、リニアの開発を進めているのはなぜか。

 西南交通大学(Southwest Jiaotong University)の張衛華(Zhang Weihua)首席教授は2018年の中国メディアの取材に「私たちは高温超電導リニアに真空チューブ技術を組み合わせた開発を進めている。すでに時速1500キロの研究に着手している」と明らかにした。外気から遮断して真空状態にしたチューブは摩擦力や空気抵抗がゼロとなり、わずかなエネルギーで物体が高速で移動できる。張氏は「車輪レール形式の車両は、摩擦やパンタグラフ、騒音などの制限により600キロが限界とされている。高速リニアが未来の鉄道技術の中心となる」と見通しを述べた。

 実際に西南交通大学は2014年、世界で初めてチューブ超高速リニア試作車両に人を載せた運転の実験に成功している。チューブ内は真空でなく外気の10分の1の気圧に設定。最高時速も50キロにとどまったが、世界初となる「大きな一歩」の実験となった。

 中国はリニア技術の蓄積を続けている。湖南省(Hunan)では2016年から国産技術による長沙リニア快速線が最大時速100キロで営業している。鉄道車両大手の中国中車(CRRC)は昨年6月、上海市で実施したリニアの試験走行で最高速度600キロを記録した。こうした技術の積み上げにチューブ式技術が加われば、時速1225キロのマッハ(音速)走行も夢ではなくなる。

 もちろん課題はまだまだ多い。中国科学院の研究者は「レールや車体の材料は安全性の観点から厳しい要求が求められ、建設費や維持費は膨大となる。電磁波が沿線住民に及ぼす影響も研究しないといけない」と指摘する。

 それでも、超高速リニア実現に向けた研究スピードは高まる一方だ。米テスラのトップ、イーロン・マスク(Elon Musk)氏は、カリフォルニアで走っている従来の鉄道を、時速1000キロのチューブ式リニアに変えようとしている。超高速リニアが実現すれば世界中に輸出される一大ビジネスになるだけでなく、離れた都市間も短時間で移動できることで人々のビジネスや生活スタイルも変容することになる。米中両大国が「夢の世界」につながるレールの上を猛進している。(c)東方新報/AFPBB News