【4月12日 東方新報】「35.7度。体温は正常です」――中国・山西省(Shanxi)太原市(Taiyuan)の行政サービスセンターでは、オフィスに入る前に検温のため行列をつくる必要はない。人から放射される赤外線をサーモグラフィーで測る検温エリアを通ると、体温が自動的に表示されるためだ。レンズから5メートル以内を通過すれば、わずか1秒で体温を測定できる。

 37.3度を超える人を発見すると自動的に通報システムが作動し、発熱者は別途詳しい検査を受ける。システムは万に一つもミスもない。サービスセンターの職員は「このシステムを導入したことでコストは削減され、検査効率が向上した」と話す。

 北京市内のある団地では、出入り口を通過する人に人工知能(AI)が「こんにちは。マスクをちゃんとつけてくださいね」と声を掛ける。AIは通行人が団地の住民かどうかを瞬時に識別する。自宅待機が必要な人間かも見極めるため、感染の疑いがある人が外出するのも防いでいる。さらに、住民に新たな感染者が判明すると、その住民の行動ルートも確認することができる。

 中国全土で流行した新型コロナウイルス。その封じ込めには、最先端技術が大きな役割を果たした。

 感染が拡大した当初、地下鉄やオフィスビル、ショッピングセンター、学校、空港、高速鉄道、住宅街などで1人ずつ体温を測ったり、マスクを外して発熱がないか確認したりする作業に追われた。検温待ちの行列ができ、マスクを外すことで逆に感染リスクが高まる悪循環も生まれた。

 その窮地を救ったのが、AIを駆使した先端技術だ。エリア一帯の市民を一斉に検温できるシステムはその代表例。さらに、個人識別システムは、驚くほど能力が高い。マスクで顔を覆い、帽子をかぶっている状態でも99%、人物を特定できる。カメラが多方面の角度から顔を分析するだけでなく、その人の歩き方も分析することで特定を可能にしている。

 街頭カメラや各施設で集められた情報はビッグデータとして管理。感染の疑いがある人を早期発見し、さらに行動ルートも即座に割り出す。人海戦術で感染者を探し、聞き込みをして行動ルートを洗い出す必要も無い。最先端技術は、検査効率をはるかに向上させ、感染リスクも大きく減らした。

 新型コロナウイルスのまん延により中国社会は一時的に大きな打撃を受けたが、都市の安全をさらに強化する「武器」も手に入れた。(c)東方新報/AFPBB News