【1月5日 AFP】英国で夏に開催される数々の音楽フェスティバルが、新型コロナウイルス流行の影響で「存続の危機」にあるとして、音楽業界団体「UKミュージック(UK Music)」が5日、政府に支援の拡大を求めた。

 UKミュージックは報告書で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってライブイベント業界は「存続の危機」にひんしており、2020年のフェスシーズンは「全滅」状態だったと訴えた。さらに「2021年のシーズンも、大部分のフェスが開催されないという現実的な脅威がある」と懸念している。

 英国各地で毎年夏に開かれる音楽フェスには、国内だけでなく国外からも大勢の観光客が集まる。UKミュージックはフェスについて、「文化的に豊かなわが国のライブ・ミュージック・シーンの柱であり、驚くほど多様な音楽ジャンルを披露するものだ」としている。

 UKミュージックによると、例えばイングランド南西部サマセット(Somerset)で開催される世界最大級の野外音楽祭「グラストンベリー・フェスティバル(Glastonbury Festival)」は、1億ポンド(約140億円)超の経済効果をもたらしている。また音楽フェス全体で毎年8万5000人を直接雇用しているという。

 英国は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で、死者が7万5000人を超えるなど大きな影響を受けている国の一つ。58億ポンド(約8100億円)規模の音楽業界も大打撃を受けている。

 数度に及ぶ全国的なロックダウン(都市封鎖)や、数か月にわたるその他の感染拡大抑制策により、ライブ会場の閉鎖が続いている。

 昨年7月に音楽業界は、英政府による芸術活動支援プログラム「文化復興基金」から、計2億5000万ポンド(約350億円)の支援を受けた。

 UKミュージックは現在、ライブ会場再開が可能となる時期のおおよその見通しを示すよう当局に要請している。また政府支援による音楽業界向けの再保険制度の創設を求めている。

 UKミュージックの最高責任者、ジェイミー・ヌジョクグッドウィン(Jamie Njoku-Goodwin)氏は、音楽業界が「支援を受け、通常の状態に戻ることは国益にかなう」と述べ、「もしも今、適切な支援と補償がイベント主催者やアーティスト、会場経営者に行われなければ、夏のフェスシーズンに多くのライブが中止になる深刻なリスクが生じる」と主張している。(c)AFP