【12月19日 AFP】英紙ガーディアン(Guardian)の2020年の「最優秀通信社カメラマン(Agency Photographer of the Year)」に、新型コロナウイルス流行の最初の中心地となった中国・武漢(Wuhan)の危機的状況を取材したAFPのカメラマンが選出された。上海在住の同カメラマンは今年、何度か武漢を訪れ、最近は同市が日常を取り戻した様子を取材している。

【記者コラム】中国・武漢、コロナウイルス流行下の日々

 エクトル・レタマル(Hector Retamal)氏は1月23日、ロックダウン(都市封鎖)が実施されるわずか数時間前に武漢入りし、記者のセバスティエン・リッチ(Sebastien Ricci)氏とビデオジャーナリストのレオ・ラミレス(Leo Ramirez)氏と共に、当時、唯一の国際通信社の取材班として8日間にわたり、市内の状況を伝えた。人けが消えた通り、自宅に閉じこもった市民、患者であふれる病院。3人が伝えた街の印象は、その後、世界中で160万人の命が奪われることになる重大な健康危機を知らしめた。

 新型コロナの感染拡大を捉えたレタマル氏の写真の中で最も象徴的な1枚は、病院の目と鼻の先で地面に横たわっている男性の遺体だ。「歩道の上の高齢男性の遺体と周囲のパニックが、コロナ危機の象徴になった」とレタマル氏。

「取材を終えた後はいつも、出会った人たちはどうしているだろうと考える。今年、武漢では何人かと再会し、無事を確かめることができた。時がたつにつれて武漢が何とか立ち直っていくところを目にできてうれしかった」と続けている。

 AFPの編集トップであるフィル・チェットウィンド(Phil Chetwynd)グローバルニュースディレクターは、ガーディアンに認められたのは最高の栄誉だとして、レタマル氏の武漢からの現地取材について、「この非常事態を最も象徴する写真が何枚か含まれている。こうした写真は、新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)を表す史料になるはずだ。カメラマンとしてのエクトルの非凡な才能を示すと同時に、この危機が発生した当時の武漢を前線で取材したAFPチームの勇気とスキルを証明している」と述べている。

 レタマル氏は1975年、チリのペニャフロール(Penaflor)生まれ。2012年にAFPカメラマンとなり、コスタリカを経てハイチに駐在し、コレラの流行を取材した。2019年から上海を拠点にしている。

 AFPカメラマンとしては、ビュレント・キリチ(Bulent Kilic)氏も2014年にガーディアンの「最優秀通信社カメラマン」に選ばれている。(c)AFP