【12月16日 AFP】これも確かに自分の家を守るための一つの方法だ。

 アジアに生息するミツバチは、どう猛で大型のスズメバチによる攻撃を阻止するために、鶏や水牛のふんや人間の尿までをも採集して巣の入り口の周りに塗り付けることを、科学者らが発見した。

 この臭ってきそうな防御策は、ミツバチが植物以外の物質を採集することが記録された初の事例であり、ミツバチが「道具」(この場合は排せつ物)を利用できることを示す初の明白な実例だ。

 米ウェルズリー大学(Wellesley College)のヘザー・マッティラ(Heather Mattila)氏率いる研究チームは、この事象に関する論文を9日の米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」で発表した。

 自然の資源を大量に集めることで知られるミツバチが、天敵の攻撃をはねのけるためにさまざまな戦略を編み出していることは、以前から知られていた。

 その戦略としては、体を盾にして巣を守る、集団で同時に体を震わせたり波のような動きをしたりして威嚇する、シャーという音を立てる、侵入者を球状に囲い込んで熱死させるなどがある。

 ミツバチより体が4~5倍大きいスズメバチは、毒針と強力な顎で完全武装した殺りくマシンだ。その顎で獲物の体を切り裂き、ばらばらにし、かみ砕く。

 偵察役のスズメバチはミツバチの巣を見つけると、化学物質で目印を付けた後、大量殺りくのために自身の巣の仲間を最大で50匹招集。標的のミツバチ数千匹を殺し、巣を占領する。

■ふんの染みが多い巣はスズメバチがとまる確率が低い

 マッティラ氏と研究チームは今回の最新研究で、ベトナムにある3か所の養蜂場で観察を行った。養蜂家の1人から、ミツバチの巣に見られる奇妙な染みは水牛のふんに由来するものだとの連絡があったのだ。

 研究チームは、養蜂場のミツバチが実際にふんやその他の排せつ物を集めているのを確認した。ミツバチはスズメバチが巣に飛来したのに反応して、集めた排せつ物を巣の入り口周辺に塗り付けたが、より小型で脅威が小さいスズメバチ種が来ても反応しなかった。

 ふんの染みの数が多い巣の入り口には、スズメバチがとまる確率が低かった。実際にとまった場合でも、スズメバチが入り口をかじって広げようとする時間が94%減少した。

 動物の排せつ物は、スズメバチを寄せ付けない化合物が含まれている可能性があると、執筆者らは論文に記している。もしくは、スズメバチが集団攻撃の標的にする巣に付ける目印の化学物質を遮断しているのかもしれない。

「アジアのミツバチによる動物の排せつ物の塗布は、最大級に危険な天敵から巣を防御するためにミツバチが進化させてきた一連の見事な対抗手段の好見本だ」と、論文の執筆者らは指摘している。(c)AFP