【12月10日 AFP】米宇宙開発企業スペースX(SpaceX)は9日、火星への有人飛行を視野に開発中の巨大宇宙船「スターシップ(Starship)」の試験機「SN8」の高高度飛行試験を米南部テキサス州の沿岸地域で行った。打ち上げは成功したかに見えたが、SN8は着地に失敗し、爆発・炎上した。

 試験飛行は9日午後に行われ、SN8は離陸後ほぼ垂直に適切な上昇を開始。その後、3基あるエンジンが次々と停止し、打ち上げから4分45秒後に最後のエンジンが停止して、機体は予想された位置へと降下を始めた。着地の数秒前にエンジンが再始動して減速を試みたが、機体は地上に激突した。

 しかし、スペースXがツイッター(Twitter)の公式アカウントで行った飛行試験のライブ中継の画面には「素晴らしい試験だ。スターシップ・チームおめでとう!」とのメッセージが表示された。同社創業者のイーロン・マスク(Elon Musk)最高経営責任者(CEO)も数分後、「火星よ、ついにここまで来たぞ!!」とツイートした。

 マスク氏は、着陸失敗の原因は降下速度が速すぎたせいだと説明。打ち上げから飛行中の姿勢制御、爆発前までの着陸軌道の正確さなど、成功した点について詳しく説明した上で、「必要なデータは全て手に入れた! おめでとう、スペースXのチーム」と投稿している。

 スペースXは次世代ロケットの高速開発試験の一環として、SN8より小型の試験機で高度数百メートル・飛行時間1分未満の試験飛行を既に何度か実施している。

 今回の飛行試験は今週初めに予定されていたが、何度か延期されていた。試験目的はSN8の巨大な金属製の機体とエンジン3基について、着陸時を含めた空力特性を確認することだった。同社は、「このようなテストにおける成功とは、特定の目的を達成したかどうかではなく、われわれがどれだけ学べるかで測られる。スペースXがスターシップ開発を急ぐ中で、その学びが将来の成功の確率を明らかにし、高めていくことになる」と公式サイトに発表しており、爆発や墜落は試験の失敗を意味しないことをあらかじめ示唆していた。

 新たな試験機SN9の完成も目前に迫っている。

 スターシップは最終的に37基のエンジンを搭載し、最大100トンの貨物を地球周回軌道に輸送できる機体となることを目指している。スペースXが2023年以降に開催を計画しているスターシップでの月周回旅行では、インターネット衣料品通販大手「ゾゾ(ZOZO)」創業者の前澤友作(Yusaku Maezawa)氏が民間人初の乗客となる予定だ。(c)AFP