【12月11日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下で、外出制限による孤独を慰めてくれるペットの需要の高まりに乗じて、子犬を求める人々から金をだまし取る詐欺がカナダで横行している。これまでに被害を訴えた人は約500人に上る。

 ケベック(Quebec)州に住むビッキー・マッケンジー(Vicki McKenzie)さんは、脳性まひを患う娘、オセアヌ(Oceane McKenzie)さん(11)のために犬を飼おうと考えた。「あの子は話したり走ったりできないから、同年代の子どもたちについて行くのは難しい」とマッケンジーさん。「だから、あの子のために犬を迎えるのは私たち家族にとって、とても大事なことでした」

 介助犬の申し込みをしたが、4年以上待っても順番は回ってこなかった。一家は、自分たちで犬を見つけて購入し、ロックダウン(都市封鎖)の間に訓練しようと決めた。

 だが、「Canadapups.com」という子犬販売サイトに掲載されていたラブラドルレトリバーの広告は、後に詐欺だったと判明した。マッケンジーさんは300カナダ・ドル(約2万4000円)をだまし取られ、オセアヌさんはひどく悲しみ号泣したという。

 愛犬団体「カナディアン・ケネル・クラブ(Canadian Kennel Club)」やカナダ各地の動物保護施設には今年、記録的な数の里親申請が押し寄せている。ブリーダー(繁殖業者)の元にも購入希望者は殺到し、2年待っても順番が回ってこない状態だ。一方、新型コロナ対策の影響で繁殖事業や獣医師の対応が制限されたことで、子犬の販売数は激減した。

■「犬強盗」から「犬用コロナワクチン」まで

 ブリーダーの個人情報が盗まれ、詐欺に利用される被害も相次いでいる。また、オンタリオ(Ontario)州トロントではブリーダーが銃を突き付けられて子犬を奪われる事件が先月2件発生。犬の繁殖そのものが危険な仕事と化している。

 高いペット需要に供給が追い付かない中で価格は高騰し、それを悪用する詐欺師の横行を許してしまっていると、詐欺対策当局は指摘する。ペット販売は今やカナダで最も急成長しているオンライン詐欺だ。

 新型コロナの感染拡大を食い止めるための公衆衛生規制は、購入希望者にペットを引き合わせることなく代金の前払いを要求する格好の口実を、詐欺師らに与えてしまった。被害に遭った人たちの多くは、温度管理ができる特殊ケージやペット保険のために必要だと言われて金を払ったと証言している。実在しないペット用COVID-19ワクチンの接種費用を要求された人もいた。

 企業や慈善事業などの信用度を評価する商事改善協会(BBB)とカナダ詐欺対策センター(Canadian Anti-Fraud Centre)には、今年に入って既に約500件に上る子犬詐欺の被害相談が寄せられた。

 BBBが今月2日に発表した調査報告によると、1件当たりの平均被害額は1000カナダ・ドル(約8万1600円)だった。この報告書は、インターネット検索で見つかるペット販売広告の約8割は「詐欺の可能性がある」と指摘している。

 マッケンジーさん一家はその後、ジャーマンシェパードの子犬を迎えることができた。「最終的にはうまくいきました」と語るマッケンジーさんのそばでは、オークリー(Oakley)と名付けられ元気に飛び回る子犬と、オセアヌさんが遊んでいた。(c)AFP/Michel COMTE