【12月10日 AFP】イタリア北部トリノ(Turin)にある星付きレストラン「デル・カンビオ(Del Cambio)」の厨房(ちゅうぼう)で、シェフのマッテオ・バロネット(Matteo Baronetto)氏は、パッケリの煮えたぎる大鍋の世話に余念がない。この分厚い筒状のパスタを、軽いトマトソースであえるのだ。

 仏レストラン格付け本「ミシュランガイド(Michelin Guide)」で星を獲得したこの老舗レストランは、昨今の新型コロナウイルスに絡む制限により休業中だ。レストランの絶品料理は常連客に出されるのではなく、困窮している人々に配られる。

 バロネット氏が参加する「連帯キッチン」プロジェクトは3月下旬、イタリア全土でロックダウン(都市封鎖)が実施される中、発足した。トリノ市内の21軒のレストランとボランティア、慈善団体で構成されるネットワークはこれまでに、約3万5000食を提供している。

 参加レストランは、素朴なトラットリア(大衆的レストラン)やエスニック料理店から、高級料理店に至るまで幅広い。そのシェフやスタッフが労働時間を提供し、しばしば寄付された食材を使って、料理の腕を振るう。

 プロジェクトの世話人でレストラン「トレ・ガッリーネ(Tre Galline、3羽のめんどり)」料理長のアンドレア・チウニ(Andrea Chiuni)氏は、プロのシェフが「シンプルで栄養のある料理」を作ることは、たとえ数百人分であっても、さほど余分な労力はかからないと話す。

 シェフらが大量に作るのは、パスタのベシャメルソースあえや、ちりめんキャベツのチーズ焼きなど、簡単でタンパク質が豊富な料理だ。

 同氏はAFPに「何より、われわれチームの料理人はこのプロジェクトに参加していることをとても喜んでいます」と語る。「料理人らを顧客のために30分居残らせる方が、このプロジェクトのためにもっと長い時間居残らせるより難しいのです」