【12月1日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は1日、ベトナムにおいて米フェイスブック(Facebook)とグーグル(Google)が平和的な批判や政治的表現の検閲を手助けしていると非難し、両社のプラットフォームが「人権禁止区域」になっていると警告する報告書を発表した。

 共産主義のベトナムは独立系メディアを禁止しており、活動家にとってフェイスブックが人気のプラットフォームとなっていた。しかし政府は最近になりフェイスブックの利用者を対象とした取り締まりを強化しており、批判の声が上がっている。

 フェイスブックは今年、当局が違法と判断したコンテンツの閲覧を制限していたことを認めた。同社の最新の透明性リポートによると、政府の要請により検閲したコンテンツの量は、過去6か月と比較し約1000%増加した。

 アムネスティは報告書で、今年に入ってからフェイスブック上のコンテンツについて、ベトナム国内での閲覧を制限された活動家11人にインタビューしている。グーグル傘下の動画共有サイト、ユーチューブ(YouTube)で同様にコンテンツを制限された活動家もこの他に3人いたという。

 そのうちの一人、民主派団体のメンバーだとして逮捕状が出され国外に逃れたグエン・バン・チャン(Nguyen Van Trang)氏は、5月以降にフェイスブックに投稿したベトナム共産党のグエン・フー・チョン(Nguyen Phu Trong)書記長とチャン・クオック・ブオン(Tran Quoc Vuong)党書記局常務に関するすべてのコンテンツが制限されたと述べた。

 また領土問題など議論を呼ぶ問題を扱ったユーチューブの投稿は、ベトナムから閲覧できないよう制限されたという。

 チャン氏はAFPに対し、「憤りを感じる」と話す。「社会運動家にとってこれらのプラットフォームは、民主主義や人権、市民社会など進歩的な価値観について人々に影響を及ぼす上で重要な役割を果たしている」

 アムネスティは、これらソーシャルメディアはかつて、ベトナムにおける表現の自由を拡大する手段として期待されていたが、今では「人権禁止区域」へと急速に変わり始めていると指摘している。

 国営メディアによると、グエン・マイン・フン(Nguyen Manh Hung)情報通信相は先月、IT企業は「悪い情報、党や国家に反対するプロパガンダ」の排除要請に、これまでになく迅速に応じていると述べたという。また、今年に入りフェイスブックはベトナム政府の要請に95%、ユーチューブは90%、それぞれ応じていると報じている。

 フェイスブックの広報担当者はAFPに対し、同社は世界各国における表現の自由を守るために尽力していると話した。

 グーグルとベトナム当局にも取材したが、回答は得られなかった。(c)AFP/Alice PHILIPSON