【11月30日 AFP】29日に行われた20F1第15戦バーレーンGP(Bahrain Grand Prix 2020)決勝で、ハース(Haas)のロマン・グロージャン(Romain Grosjean)が高速でクラッシュし、マシンが炎上する大事故が起こったが、本人は無事だった。関係者やドライバーは、F1用に開発された現在の安全システムのおかげだと話している。

 レースの1周目で、時速250キロ前後で走っていたグロージャンは激しくブレーキをかけながらコース脇のバリアーに衝突。マシンは衝撃で真っ二つになって炎に包まれ、前半分は鋼鉄のガードレールにめり込んでガードレールをひしゃげさせた。

 それでも、グロージャンのいるコックピットはそれによってレールの下をくぐり抜け、本人は自力で脱出して手や足首に「軽いやけど」を負っただけで済んだ。グロージャンはその後、搬送先の病院のベッドからSNSに動画を投稿し、「ひとまず、皆さんに僕は大丈夫だということを伝えたい。まあ、だいたい大丈夫だ」「たくさんのメッセージを本当にありがとう」とコメントした。

 1996年に総合王者に輝き、アイルトン・セナ(Ayrton Senna)氏が命を落とした1994年のサンマリノGP(San Marino Grand Prix)では、セナ氏のチームメートだったデイモン・ヒル(Damon Hill)氏は、「彼が生きているのは奇跡だ」とコメントしている。

 この事故では、スタートからレースを追い、数秒で現場へ到着したセーフティーカーとメディカルカーのドライバーを担当するアラン・ファン・デル・マルヴァ(Alan van der Merwe)氏、そして医療責任者のトップを務めるイアン・ロバーツ(Ian Roberts)医師が炎と闘ってグロージャンの命を救った。

 ファン・デル・マルヴァ氏は「私たちもすごく驚いた。これほどの炎はこの12年で初めてだった」と話している。

「あれだけの事故で、ロマンが自力で車から降り始めたのには非常にびっくりしたが、無事が確認できてほっとした。われわれが開発した安全システムの数々が、一体となって機能したことの証明だ。(頭部保護装置の)Haloにバリアー、シートベルト、そういった全てが、あるべき形で機能した」

「どれか一つでも欠けていれば、全く別の結果になった可能性もある」

 グロージャン自身も、当初は物議を醸したHaloが自分の命を救ったと話し、「自分はずっと賛成派じゃなかったが、今はF1に持ち込まれた中で最高のものだと思っている。あれがなかったら、今こうやってみんなに語りかけることはできなかっただろう」とコメントした。(c)AFP