【11月25日 AFP】「動物、特に猫と犬は、人間より信頼できると思う」──中東オマーンの首都マスカットに住むマリヤム・バルシ(Maryam al-Balushi)さん(51)がベッドに座って餌を取り出すと、数十匹の猫がわやわやと群がった。かたわらに置かれた爪とぎポールでも、たくさんの猫が飛び乗ったり、飛び降りたりしている。

 近所からの苦情や高い餌代にもめげずにバルシさんが飼っている猫は、総勢480匹。犬も12匹いる。犬猫のうち17匹は目が見えない。

 バルシさんがたくさんの動物と暮らすようになったのはこの10年ほど。多くは路上で厳しい暮らしをしていた野良猫や野良犬で、その姿にバルシさんは幼くして孤児となった自分の身の上を重ね合わせた。

 現地メディアによると、オマーンではペットを捨てると25ドル(約2600円)の罰金が科されるにもかかわらず近年、捨てられる動物が増えている。動物愛護活動家らはその数を減らすために、野良猫や野良犬を捕獲し、不妊・去勢手術を施して放す取り組みを推進している。

 バルシさんの家は今やペット用ケージでいっぱいだ。ケージごとに順番に開けて、家の中で運動させたり遊ばせたり、餌をやったり、洗ってやったりする。1カ月の餌代は約7800ドル(約80万円)。さらに獣医師の診療費もかかる。

 バルシさんがヒントを得たのは、食べ残しを野良猫や野良犬にやっていた隣人だった。そのうちバルシさんの「猫愛」が口コミで広まると、異動が決まった外国人駐在員が玄関先にペットを置いていったり、動物保護施設から預けられるようになったりした。2014年についに家を購入してからは、さらに多くの動物を飼えるようになった。

 インスタグラム(Instagram)のバルシさんのアカウントは、ものすごい数のフォロワーを獲得している。バルシさんは、たくさんの猫や犬に囲まれていると、気分の落ち込みも防げると語り、「昔はいつも暗い気分だった。この子たちは私を救ってくれた命綱」と述べた。 (c)AFP