【11月12日 AFP】(更新)フランスで12日、酒に酔った状態で緊急帝王切開に立ち会い、英国人妊婦の死を招いたベルギー人の麻酔医に対し、禁錮3年が言い渡された。

 ヘルガ・ワウテルス(Helga Wauters)被告(51)は2014年9月26日、フランス南西部ポー(Pau)郊外の病院で、出産予定日を過ぎて入院したこの女性(28)の故殺(計画性のない殺人)の罪で訴追されていた。同罪での禁錮3年は最高刑。被告にはさらに、医療行為の禁止も命じられた。

 手術を受けた女性は、混乱を極めた帝王切開で脳が酸欠状態に陥り、4日後に心停止。無事に生まれた息子を一度も見ることもなく息を引き取った。

 捜査により、同院で業務に就いて2週間足らずだったワウテルス被告が、帝王切開前の女性に気管チューブを挿入する際、気道ではなく食道に挿入したことが明らかになっている。

 女性の酸素レベルが急落した際には、ワウテルス被告は蘇生を試みようと、人工呼吸器ではなく酸素マスクを使用。目撃者らは、被告が人工呼吸器の使い方を知らなかったと証言している。

 ワウテルス被告は事件発生当日の朝、手の震えを止めるため「毎日するのと同じように」ウオッカの水割りを飲んだことを認めている。

 先月の公判で同被告は「自身の中毒症状と職業とが相いれないものだったと、今は認識している」「この死を一生悔やむだろう」と話していた。

 被告は事件当日の日中、女性に対し、硬膜外局所麻酔を行っていた。分娩(ぶんべん)中に合併症を起こし、緊急帝王切開が必要になった。

 全身麻酔をかけるために呼び出されたワウテルス被告が産科病棟に戻った際、呼気からアルコールの臭いがしたと、目撃者らは証言している。

 手術中に意識が戻った女性は嘔吐(おうと)し始め、「痛い」と叫びながら気管チューブをむしり取ったとされる。

 被告には、今や6歳になった息子とその父親、女性の両親、妹に対し、賠償金として約140万ユーロ(約1億7000万円)の支払いも命じられた。

 ワウテルス被告は2013年と14年に、アルコールの影響下で勤務したとして、ベルギーの2病院から解雇された後、フランスへ転居し再就職。

 裁判文書によると、ワウテルス被告は医学生時代は優秀だったものの、人間関係のトラブルでうつを発症し、何年も療養施設への入出所を繰り返していたという。(c)AFP/Nathalie ALONSO