【11月9日 AFP】主要8か国(G8)首脳会議(サミット)に反対する集会で出会った元恋人は、実在しない人物だった──英国在住のケイト・ウィルソン(Kate Wilson)さん(42)は2010年、その事実を友人たちから知らされた。

 マーク・ストーン(Mark Stone)と名乗っていた元恋人の本名は、マーク・ケネディー(Mark Kennedy)。妻も子どももいる、環境団体専門のベテラン潜入捜査官だったのだ。

 何十年も続けられてきた英警察の潜入捜査は論争の的になっていたが、今月ようやく公式な調査が始まった。環境団体に潜入するために他人になりすました捜査官らと、数年に及ぶ恋愛関係を持った被害者らは、捜査官らの活動が明らかにされることを願っている。

 看護師として働くウィルソンさんはAFPの取材に対し「本当にひどい、言葉ではほとんど説明できない」と、自らのつらい体験を訴えた。

 もう一人の被害者リサさん(仮名)も、ケネディー捜査官と6年間恋愛関係にあった。だが、やはり2010年に捜査官の本物のパスポート(旅券)を偶然見つけて正体を知った。

 リサさんは被害者団体「Police Spies Out of Lives(警察のスパイは人生から出ていけの意)」のウェブサイトに「彼はすべてを共有してきた相手だった」「父が亡くなった時に支えてくれたのは彼だった」と投稿した。

 同団体は、この問題を警察による「性的かつ精神的虐待」だと主張し、リサさんのような女性を支援するためにウェブサイトを立ち上げた。

 身分を隠した捜査官と恋に落ち、子どもまでもうけた女性もいる。覆面捜査官「ボブ・ロビンソン(Bob Robinson)」は1984年、ジャッキーさんという若い女性と出会い、1年後には息子が生まれた。ジャッキーさんは、二人には動物好きという共通点があると信じていた。

 ところが息子が生まれた2年後、「ボブ」は警察に追われていると言って失踪した。実際には、内偵任務が完了したためだった。ジャッキーさんは2012年の新聞報道で、初めて「ボブ」の正体を知った。