【11月3日 Xinhua News】中国の科学者が、ネアンデルタール人と近縁関係にある旧人「デニソワ人」に関する研究で再び重要な成果を得た。新たな研究は、青海チベット高原北東部にある白石崖(はくせきがい)鍾乳洞遺跡の後期更新世堆積物の中にデニソワ人のミトコンドリアDNAが保存されていることを明らかにした。これにより、同高原における人間活動の歴史研究の幅がより広がり、後期更新世にデニソワ人が長く青海チベット高原で生活していたことが示された。研究成果は10月30日、国際的学術誌「サイエンス」の電子版に掲載された。

 研究は蘭州大学(Lanzhou University)の環境考古学チームが主導し、中国科学院の青海チベット高原研究所と古脊椎動物・古人類研究所、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所、オーストラリアのウーロンゴン大学、米国のネバダ大学、リッチモンド大学、アリゾナ州立大学など多くの研究機関と共同で完成させた。

 デニソワ人は新たに発見された初期人類の一系統で、かつて欧州に広く分布していたネアンデルタール人の姉妹群とされる。デニソワ人に関する研究は、2012年と19年の2度にわたり「サイエンス」がその年の「画期的な十大科学成果」に選出している。

 中国科学院の陳発虎(Chen Fahu)院士(アカデミー会員)率いる蘭州大学環境考古学チームと同院青海チベット高原研究所のチームは2019年、甘粛省(Gansu)甘南チベット族自治州夏河県(Xiahe)で発見されたデニソワ人の下顎骨化石の研究成果を発表。同化石がロシア・アルタイ地方のデニソワ洞窟以外で初めて発見されたデニソワ人の化石だと明らかにした。これにより、デニソワ人の空間分布は初めてシベリア地域から青海チベット高原へと拡大され、同高原の人間活動の歴史は4万年前から16万年前までさかのぼることとなった。専門家は同発見について、デニソワ人研究と青海チベット高原の先史人類活動研究という二重の画期的進展との見方を示した。

 白石崖溶洞は夏河県甘加郷にある。2018年に蘭州大学環境考古学チームが第1回発掘調査を実施し、国内外の多くの研究チームを招いて学際的な総合研究を行った。チームは1×2メートルに区切られた発掘エリアの2カ所で発掘を実施。うちT2区画で多くの石器と動物の骨が出土した。同区画の地層は土の質や色、含有物などにより10層に区分されるが、石製品と動物の骨は各層から出土した。中でも10層目からの出土が多かった。

 蘭州大学の張東菊(Zhang Dongju)教授は、研究チームが白石崖溶洞の土壌堆積物を年代学や分子生物学、堆積学などの観点から総合的に研究した結果、後期更新世の堆積物からデニソワ人のミトコンドリアDNAを発見したと説明。「DNAはT2区画の第2、3、4、7層から見つかった。地層年代は6万年前と10万年前に当たる。デニソワ人の洞窟での活動時期をさらに広げるとともに、彼らが東アジアの広い範囲で長期間活動していたことを再度裏付ける証拠になる。東アジアの古人類の進化と異なる人類間の交流を知る上で重要な情報にもなる」と述べた。

 今回の発見は、世界最先端の古ゲノム解析技術を用いて中国の考古学遺跡の堆積物から古人類の遺伝子情報を抽出した初の事例となった。青海チベット高原で実施されている第2次総合科学調査研究の重要成果の一つでもある。(c)Xinhua News/AFPBB News