【11月2日 AFP】タイのマハ・ワチラロンコン(Maha Vajiralongkorn)国王は1日、同国で政権の退陣や王室改革を求めるデモが数か月にわたり続く中、英チャンネル4(Channel 4)の取材ですべての国民に対する「愛」を示した。国王が取材に応じるのは異例。

 ワチラロンコン国王はタイ権力の頂点に立ち、その影響は同国社会のあらゆる側面に及ぶ。しかし、かつては安泰とされた王室も、民主派デモの高まりにより前例のない困難に直面している。デモ指導者の中には、王室批判を厳格に禁じる不敬罪の廃止などの改革を訴える人もいる。

 1日、国王を一目見ようと集まった数千人が首都バンコクの王宮(グランドパレス、Grand Palace)前にあふれ、国王のシンボルカラーである黄色の服を着て王室への支持を表明。ワチラロンコン国王とスティダー王妃(Queen Suthida)の写真を撮ろうと、王宮近くに押し寄せ国王夫妻を待ち構えた。国王が王宮から出てくると、群衆は「私たちは忠実に生き、忠実に死にます」「国王万歳!」と声をそろえた。

 国王は群衆の間を縫って歩き、支持者から花を受け取った。地元メディアの映像によると、国王が「ありがとう」と述べ、自身の写真にサインする場面もあった。

 群衆の中にいた英チャンネル4の記者から改革を求める抗議デモ参加者について問われると、国王は「私たちは同じように彼らを愛している」と述べた。譲歩の余地があるかとの問いに国王は「タイは譲歩の国だ」と答えた。チャンネル4の公式ツイッター(Twitter)に投稿された映像で明らかになった。

 国王は多くの時間をドイツで過ごすが、父のプミポン・アドゥンヤデート(Bhumibol Adulyadej)前国王の命日と仏教の祝日に合わせ、ここ数週間はタイに滞在していた。

 タイでは若者が大半を占める活動家による反体制デモが続いており、バンコクで最も交通量が多い交差点で数千人が複数回、ゲリラ的に集会を行い抗議活動を行っている。反体制運動は指導者不在ながらも団結し、2014年のクーデターを指揮した元陸軍司令官のプラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相の退陣を求めている。しかし王室改革を求める声は保守派からの反発を呼び、王室支持者が独自の集会を開くこととなっている。(c)AFP