【10月25日 東方新報】かねてから注目されていた中国の法定デジタル人民元(DC/EP)のスマートフォン利用が深セン市(Shenzhen)で試験的に始まった。深セン市政府は深セン市経済特区成立40周年の記念イベントとして、10月12日から羅湖区(Luohu)で、「デジタル人民元ボーナス」キャンペーンを実施。8日に微博(ウェイボー、Weibo)公式アカウントを通じて、デジタル人民元200元(約3163円)分を市民5万人(総額1000万元<約1億5819万円>)に配布する、として利用希望者に募集をかけたところ、191万3847人が応募していた。当選者5万人は12日から18日の有効期限内に、デジタル人民元利用アプリを通じて羅湖区の3389店舗で、買い物などの消費ができる。

 当選者はまず市政府からスマートフォンでメッセージを受け取り、リンクされたサイトからデジタル人民元アプリをダウンロード。アプリを開き、画面指示に従って携帯電話番号と認証番号をいれれば使用可能だ。

 200元を受け取ると、「銀行に預金する」「ウォレットにチャージする」の2つの選択肢が現れ、同時に取引記録も出てきて、羅湖区工業情報化局から200元の入金記録も確認できる。

 アプリを再度開くと、100元(約1581円)札のアイコンが現れ、左上にウォレット内の残高が表示され、上にスライドすると支払いができ、下にスライドすると受け取りができる。支払いのインターフェースはQRコードになる。金額受け取りの場合は、金額設定機能で入力してから、インターフェース同士をタッチさせる。

 このデジタル人民元アプリはまだパイロット版であり、ショッピングモールではタッチ方式は機能していない。例えば万象城のある店で、タッチ方式で支払おうとしても、サービスが開始されていません、と通知が出るだけだ。

 ただ、デジタル人民元ボーナス利用開始日に、羅湖区の対象のショッピングモールを訪れたところ、デジタル人民元ボーナスキャンペーンに参加することを示す看板は全く目立っておらず、レジの横に小さな看板やステッカーが貼っている程度だった。

 デジタル人民元については、8月14日に商務部が「京津冀(北京・天津・河北)」地域、長江デルタ、広東・香港・マカオグレートベイエリア(Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)、中西部のそれぞれの地域でデジタル人民元導入テストを展開することを発表。まず深セン、成都市(Chengdu)、蘇州市(Suzhou)、雄安新区)および冬季五輪の関連部門と協力して、状況をみながらデジタル人民元導入をその他の地域に拡大していく方針だ。

 中国では電子マネーの普及率が非常に高く、脱現金化が進んでいる。法定デジタル通貨研究は世界各国で取り組まれているが、やはりトップを走ってきた。

 電子マネーが銀行口座とひもづけされた決済システムであるのに対し、デジタル人民元は現金通貨そのものをデジタル化したもので、銀行に預金することもできるが、銀行口座に関係なく、デジタル・ウォレットから現金同様に利用できる。現金のもつ匿名性を保ちながら、違法な通貨の流れは追跡、阻止でき、違法な資金移動、マネーロンダリング(資金洗浄)を防げ、安全性も確保できるという。また、偽札やすりの心配もしなくてすむ。

 目標は現金通貨に完全にとって代わること。中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)は2014年から法定デジタル人民元の研究を開始し、2017年末、国務院の承認をえて、人民銀行、一部商業銀行や関係機関を組織したデジタル人民元システムの共同研究開発をスタートさせた。タイムスケジュールは明確にされてはいないが、2022年の北京冬季五輪では、世界各国から観光客がデジタル人民元をつかって買い物をする世界が現実のものとなりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News