アルプスの氷河融解がもたらす考古遺物の山、研究は時間との闘い
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■珍しい有機物
ここしばらく、スイス・ベルニーズアルプス(Bernese Alps)のシュニデヨッホ(Schnidejoch、標高2756メートル)は科学者らから注目されている。ここでは、紀元前3000年にまでさかのぼると考えられる、カバノキの樹皮で作った矢筒が2003年に発見された。
その後、この矢筒と同じ所有者のものと思われる皮革のズボンや靴が発見されている他、紀元前4500年頃のものとみられるその他の遺物が数百個見つかっている。
考古学者のレグラ・ガブラー(Regula Gubler)氏は、「通常の発掘作業では出てこないような物が(氷河考古学では)見つかる、わくわくする」とAFPに語った。
同氏は、皮革や木、樹皮や繊維などの有機物が見つかるとし、浸食により失われるものが、氷の中では保存されるのだと説明した。
ガブラー氏率いる発掘チームは9月、シュニデヨッホで新たな発見をした。6000年以上前のものと思われる植物の靱皮(じんぴ)繊維で作られた、結び目のあるひもを見つけたのだ。
このような驚くべき発見の数々は、気候変動の影響により可能となった。しかし、それは同時に脅威でもある。もし迅速に発見がなされなかった場合、氷から解け出た遺物は急速に分解され、永久に失われることになるためだ。
「時間は限られている。20年後にはこれら遺物はなくなり、氷もなくなるだろう」とガブラー氏は語った。(c)AFP/Nina LARSON