【11月15日 AFP】道具作りに必要な水晶を求め、一行は山の急斜面を登り、アルプスの氷河を必死にわたって、ようやくその鉱脈を見つけた──。約9500年前の中石器時代の狩猟採集民らの痕跡が発見され、考古学者らは、このような推論を導き出した。

 過去数十年の間に氷河の融解は急速に進んだ。その影響からこうした貴重な遺物が数多く発見されるようになり、「氷河考古学」という新たな研究分野を誕生させた。

■画期的な発見

 威圧的にそびえ立つ山々に先史時代の人々が近づくことはなかった──1990年代の前半までは、このような考え方が広く浸透していた。

 だが融解する氷の中から出現する遺物の数々が示唆しているのは、アルプスのような山岳地帯でも人間は何千年にもわたって、精力的に活動していたということだ。

 そして今日では、近くの渓谷を訪れる、狩猟や放牧をする、資材を探す、といった目的で、人々が当時から山に足を踏み入れていたと考えられるようになった。

 水晶鉱脈の遺跡探査に参加したスイス・ウーリ(Uri)州の考古学者クリスチャン・オフダマー(Christian auf der Maur)氏は、発見は画期的で「水晶やその他の資材を探すため、人々が標高3000メートル程度まで登っていたことが分かった」と述べた。

 融解する氷河の中から最初に出てきたのは、戦士「エッツィー(Oetzi)」の遺体だった。遺体は1991年、イタリア・チロル(Tyrol)地域のアルプス氷河の中から、約5300年間にわたり保存された状態で見つかった。

 エッツィーについては、山に足を踏み入れた先史時代のまれなケースとする説があったが、その後、高地での人的活動の痕跡が数多く報告され、この説は誤りであったと考えられるようになった。