「誰も悪くない」 英トラック遺体事件から1年 ベトナム人遺族の嘆き
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【10月23日 AFP】レー・ミン・トゥアン(Le Minh Tuan)さんは毎晩、亡くなった息子のベッドで丸くなって眠る。30歳だった息子は1年前、英国で他のベトナム人移民数十人と共にトラックの中で窒息死した。
男女合わせて計39人のベトナム人の死について、過失致死から密入国の共謀までさまざまな罪に問われた被告の男4人の裁判が、英首都ロンドンで行われている。
しかしトゥアンさんは──他の悲しみに暮れる多くの家族と同様──被告らに恐ろしい悲劇の責任を問うつもりはない。「誰のことも責めるつもりはない」
「英国に行って裁判を傍聴し、亡くなった息子が発見された場所で線香を上げてやれたらいいのに」。ベトナム中部ゲアン(Nghe An)省にある荒れ果てた自宅で、トゥアンさんは話すごとにすすり泣きながらAFPに語った。
トゥアンさんの息子、レー・バン・ハー(Le Van Ha)さんはより良い生活を求め、英国を最終目的地とする欧州への渡航費として密入国業者に金を払った。ベトナムを出てトルコ、ギリシャ、そしてフランスをジグザグに経由するルートだった。
警察官になることを夢見ながら稲作を営んでいたハーさんは、その夢が実現しないまま昨年の夏、2人の幼い子どもと妻を残して旅立った。
そして昨年10月23日、ハーさんの遺体が見つかった。英南東部エセックス(Essex)州で、少なくとも12時間は密閉され耐え難い高温となった暗いコンテナトラックの荷台から発見された。亡くなった人々の中には、15歳の少年2人を含む10代の若者も10人いた。
検察当局によると、被告らは警察に察知されないよう、大型トラック2台に乗っていた移民を1台で輸送しようとしたと述べている。
当時20歳だったグエン・ディン・ルオン(Nguyen Dinh Luong)さんは、空気がなくなり始めたとき、必死に救急隊に通報しようとした。
しかし、ルオンさんの両親もトゥアンさん同様、被告に対する怒りはない。ルオンさんの父親、グエン・バン・ジャオ(Nguyen Van Gia)さんは「わざと死なせたわけではない」と語った。祭壇には息子の写真が飾ってある。
ルオンさんは、ゲアン省に隣接する中部ハティン(Ha Tinh)省に住む一家の8人きょうだいの一人だった。2018年からフランスに移住して働き、さらに良い働き口を求めて英国を目指そうとした。「誰も息子に渡航を強制していない、ただ運が悪かったのだ」とジャオさんは言った。