【10月25日 AFP】ボスニア・ヘルツェゴビナの野原で、2歳の雌犬「オルナ(Orna)」は草むらに鼻先を突っ込み、猛烈に嗅ぎ回る。目標物を見つけると、お座りをし、尾を振って、赤いゴム製おもちゃの褒美を受け取る。

 オルナにとってこの訓練は遊びの一つにすぎないが、地雷探知犬の技能はボスニアだけでなく世界各地で多くの命を救っている。

 バルカン(Balkan)半島に位置するボスニアは、1990年代の内戦にさかのぼる地雷を今なお、自国の領土から撤去する作業を続けている。同時に遠くはアジア、アフリカ、中東などに派遣される地雷探知犬の重要な訓練場となっている。

 1992~95年のボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の末期には、領土の約8%に地雷が埋設されていた。今日では、地雷探知犬の働きのおかげもあって、その割合は2%まで減ったと専門家らはみている。

 地雷探知犬は米国とノルウェーの民間非営利団体(NGO)が支援する2か所の施設で、特殊技能を習得している。黒と茶の毛色をしたベルジアン・マリノア種のオルナが訓練を受けているのは、首都サラエボ郊外にある「ノルウェー人民援助(NPA)」の国際訓練センターだ。

 同センターで働くゴルダナ・メドゥニャニン(Gordana Medunjanin)さんによると、ここではオルナの他、この犬種40匹が訓練中で、さらに30匹の「退役犬」が「働きにふさわしい引退生活を楽しんでいる」という。

 マリノア種は「精力的で、順応性があり、働くことや協力して何かをすることに非常に意欲的」なことで知られる品種だとメドゥニャニンさんは説明する。

 訓練センターの「卒業生」たちは現在、ボスニア、イラク、レバノン、ソマリア、ジンバブエ、カンボジアで地雷撤去事業に参加している。

■「これはゲーム」

 オルナのトレーナー、ナミク・ジャンコ(Namik Dzanko)さん(29)によると、訓練は子犬が生後4~6週になると開始され、最長18か月間続くという。

 犬たちはまず、回転台に取り付けた複数のブリキ缶の中に無作為に隠した爆薬のにおいを嗅ぎつけることから、技能を磨き始める。成功すると褒美として、赤いゴム製おもちゃでしばらく遊ぶ時間が与えられる。

 続いて、さらに高度な訓練が、屋外の模擬「地雷原」で行われる。黄色のテープで複数の区画に仕切られた100平方メートルの敷地には、起爆装置のない爆発物が埋められている。

 トレーナーに導かれた犬たちは、においを入念に嗅ぎながら真っすぐ進む。地面に埋められた爆発物のにおいを感知するとおとなしく座り、疑わしい場所に鼻先を向けて爆発物を「マーク」する。

 トレーナーのジャンコさんは「犬は自分が探しているのが地雷で、危険な物だとは理解していません。犬にとって、これはゲームなのです」と話す。

「何かを見つける。そうすれば、おもちゃのご褒美がもらえる。このポジティブな体験を通じて、犬は世界各地で命を救う役目を果たしています」