【9月30日 AFP】シンガポール航空(Singapore Airlines)は29日、新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた財務基盤の強化を目的とした遊覧飛行「どこにも行かないフライト」について、環境に悪影響を及ぼすとの反発を受けて、計画を撤回すると発表した。

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 航空業界が深刻な危機に陥る中、日本や台湾、オーストラリアなどの複数の航空会社は収入を補うため、同一空港発着、短時間の遊覧飛行を実施してきた。こうした遊覧飛行は、新型ウイルス絡みの制限が課される中で、空の旅を切望している人をターゲットに、意外にも人気を集めている。

 しかし、ほぼすべての旅客機を地上待機させ、数千人の従業員を削減してきたシンガポール航空は、再検討の結果、遊覧飛行計画を撤回すると明らかにした。代わりに、旅客機の見学ツアーや、世界最大の旅客機、エアバス(Airbus)A380型機の機内でのディナーなどを考案したという。

 シンガポール航空の遊覧飛行「どこにも行かないフライト」に対しては、環境活動家らが反対の声を上げている。環境保護団体SGクライメート・ラリー(SG Climate Rally)は、「もっともな理由のない炭素排出量の多い旅行」を助長すると批判している。

 航空業界で大規模な人員削減が相次ぐ中、シンガポール航空も今月、全体の20%に当たる4300人の従業員を削減した。

 国際航空運送協会(IATA)は、アジア・太平洋地域の航空会社が今年、計278億ドル(約3兆円)の損失を計上すると見積もっている。さらに、航空交通量が新型コロナウイルスの流行以前の水準に戻るのは、早くとも2024年になるとの見通しも示している。(c)AFP