■舞台は簡単に止められない

 演出家のクロエ・ベグ(Chloe Begou)氏は、最悪なのは「出演者がステージ上で被害を受ける場合だ。それでも続行しなければならないので」という。

「80人が参加しているリハーサルを簡単には止められない」。本番となると、なおさら難しいとベグ氏はいう。

 ブリオさんの告発は、フランス文化省がハラスメントを報告・防止する新制度の立ち上げを検討する動きへとつながった。だが、本番中やリハーサル中の性暴力は判断が難しい可能性がある。

 ブリオさんの事件を担当する検察官は、「訴状の内容を明確にして、舞台上での演技が性暴力に相当するかどうかを判断する必要がある」と述べた。だが文化省は、この事件を深刻に受け止めるよう検察官に文書で促すという極めて異例の措置を取った。

 ブリオさん側は、共演したバリトン歌手はその場面で演出家が要求した以上の行為に至ったと主張。問題が起きたとされるオペラ・コミック座は、再発防止のために一層の努力をしていると述べている。

 オペラ・コミック座の総監督オリビエ・マンティ(Olivier Mantei)氏は、「今後の上演作品では、想定されるリスクについて出演者に説明し、被害を受けても泣き寝入りする必要はないと呼び掛けていく」と話した。

 レンヌ・オペラ座(Rennes Opera)の総監督、マチュー・リーツラー(Matthieu Rietzler)氏は、「告発された歌手の推定無罪は尊重する」としながらも、ブリオさんの「勇気」を称賛。AFPに対し「彼女の証言で、私たちは業界の慣例に疑問を抱くようになり、業界全体でどうやって状況を改善できるか考えるようになった」と述べ、性暴力に対して今後は「ゼロ・トレランス(不寛容)」で臨んでいくだろうと語った。(c)AFP/Rana MOUSSAOUI