■「陰謀論のスポンジ」

 フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)、インスタグラム(Instagram)などの大手ソーシャルメディアは、Qアノンのアカウントを禁止したが、フォロワーはより閉鎖的なフォーラム(広くデマを拡散していると思われるサイト)やより地域型の陰謀グループに移行しており、そうした空間で、移民の増加や新型ウイルスによる経済恐慌、個人の自由が失われているといった主張など、欧州で関心の高いテーマにQアノン的解釈を加えている。

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領やアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相は国際陰謀団の一味だとか、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相はトランプ氏が「ディープステート(闇の政府)」と闘うためにQが投入したというような主張もある。

 ユーチューブ(YouTube)のフランス版Qアノン・チャンネル「DeQodeurs」の登録者は、8月の1か月間で2万1500人から6万8500人に急増した。ドイツ最大のQアノン関連ユーチューブ・チャンネル「クローバルチェンジ(Qlobal-Change)」には10万人以上が登録し、その動画は再生回数1700万回を誇る。

 仏パリ大学(University of Paris)でデジタル文化について教えるトリスタン・メンデス(Tristan Mendes)氏は、「Qアノンは、陰謀論のスポンジだ」と話す。「反ユダヤ主義から、第5世代(5G)移動通信システム、マスク着用まであらゆる事柄が、SF作品として現れる」

 専門家らが特に憂慮しているのは、Qアノンと極右勢力の親和性だ。ドイツでは、欧州の白人人口を欧州域外出身者と入れ替える「大置換」が行われようとしているという国家主義者らの陰謀説を支持する人々の間で、Qアノンが定着しつつある。

 ディトリヒ氏から見れば、Qアノンと極右勢力は核となる信念が共通しているため、この二つが交差することは「理にかなっている」という。「両者に共通しているのは、少数のエリート集団が秘密裏に『ドイツ人』にとって損失となる出来事を支配しており、また『主流メディア』の情報はコントロールされているため、『真実』は非主流メディアでしか分からない」という主張だ。

 伊誌「L'Espresso」の記者、アンドレア・パラディーノ(Andrea Palladino)氏は、「かすかだが、憂慮される兆候もある」という。彼が追っているQアノンのアカウントのいくつかは、武装を呼び掛けているという。(c)AFP/Cecile FEUILLATRE with Mathieu FOULKES in Berlin