【9月20日 東方新報】中国で空前の独身ブームが到来し、それに伴う新たな市場が拡大している。中国民政部の統計によれば、2018年は中国の成人単身者は2.4億人。うち完全なる一人暮らしは7700万人だったが、これが2021年には9200万人に増えると推計されている。しかも彼らの消費力は旺盛で、中国の新しい「お一人さま経済」をけん引すると期待がよせられている。

「土曜日は会社に行かず、小雨無風で気温は快適、一人で家にいてのんびり、本やテレビをみながら、おやつをたべていたい。これって生活に必要な一面だよね?」…こんな優雅な単身生活を描写する28歳のとあるネットユーザーの書き込みが共感を呼んでいた。

 彼らは独身者だが、かつての独身者を意味する「光棍」とはまたニュアンスの違う、「楽単族」と呼ばれている。文字通り単身(独身)生活を楽しむ若者たちだ。一人暮らしを自由で快適だと考え、自分を自立させ成熟させると感じている。

 結婚観や恋愛観がないわけではないが、すでに自分の生活リズムを確立しており、特に一部の女性たちは職場における地位が上昇し、仕事が安定するにつれ、結婚は衣食住など生活を支えてもらうためにするのではなく、ソウルメイトを得ることが目的となってきている。

 結婚して子育てに追われて生活のレベルを落とすより、一人で自分好みの生活を維持したいと考え、早く結婚するために条件を妥協しようとは絶対思わない。

 彼らにとって、生活の主役は自分。米国の情報テータ測定企業、ニールセン社が5月に出した「中国単身経済リポート」によれば、42%の中国人単身者にとって消費は、己の楽しみであり、この割合は非単身者よりも高いという。

 彼らは個性化の消費市場を追求し、生活のクオリティーをアップすること、そしてレジャー娯楽のための消費を目標としている。だが、それはかつての金持ちの「浪費」とは違い、量やサイズを一人分にして無駄を省き、その分、質のよいものを求める傾向が特徴だ。

 こうした楽単族市場に大きなポテンシャルが潜んでいる。例えば、500グラム入り小袋のコメ、200ccのボトルワイン、2.5リットルの小型洗濯機…。精緻だが無駄を省いた一人用グッズは、以前は市場にほとんどなかったが、最近は、あらゆる分野で「お一人さま用」が登場している。

 飲食産業においては、一人前食、ヘルシーダイニング、サプリ、ずぼら飯などが2020年度の美食のトレンドとなった。2019年11月11日の「光棍節」(お一人さまデー)には、中国最大の小売りオンラインショッピングモール・天猫(T モール、Tmall)で一人用調理家電が調理家電全体の2倍の速さで売れていた。

 一人ずつテーブルを離し、一人分のセットメニューをそろえた「お一人さま用」が人気。単身者向けレストラン「一家一人食餐庁」の創始者は「若い人たちはいつも、すしづめの地下鉄に乗り、会社でも回りに人がいつもいる状態で、一人っきりになれる空間を求めている」と、単身者向けレストランの人気の背景を説明する。一人用のミニカラオケも増えている。

 国内外旅行会社の75%以上が1人旅の申し込みを受け付けており、いろんなタイプの1人旅プランを提示している。

 快適な睡眠のためのグッズや空間、サービスを提供する睡眠経済ブーム、時代劇コスプレ用のファッション・国朝漢服ブームなども「お一人さま経済」の興隆に伴って登場した新しい市場だ。個性化、個人化、自分のための楽しみ、コンビニ化などが「お一人さま経済」のキーワードだ。必需品消費から精神的消費に向かう傾向もある。

 こうした独身層はホワイトカラー、ゴールデンカラーと呼ばれる富裕層も多く、一部分の人たちは、衣食住、娯楽、教育の各方面での需要を細分化し、時に消費者から独立した生産者、提供者側になることもある。「お一人さま経済」は、当代社会のある種の人々の生活行為が生み出した新たな市場であり、旧世代には「理解できない世代」が新たな市場を切り開いている。まだまだ気づかないビジネス需要がこの市場に埋もれていることだろう。(c)東方新報/AFPBB News