【9月12日 AFP】イスラム教徒に対する人権侵害が指摘されている中国の新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で撮影されていたことが明らかになり、世界的に批判を集めているディズニー(Disney)の実写版映画『ムーラン(Mulan)』が11日、中国で劇場公開された。国内の評価も振るわず、厳しい出だしとなった中、中国外務省は同作を擁護するコメントを発表した。

 中国の伝説的な女性兵士の民話を題材にした『ムーラン』は、2億ドル(約210億円)を投じて製作されたが、昨年、主演女優の劉亦菲(リウ・イーフェイ、Liu Yifei)が香港警察による民主派デモ取り締まりを支持する発言をしたことで、公開前から反発を招いていた。

 今週には、新疆ウイグル自治区で撮影をしていたことや、作品のエンドロールでディズニーが「深い感謝」の意を表した協力機関に同自治区の政府機関が含まれていることに対し、世界中でボイコットの声が上がった。

 しかし、中国外務省の趙立堅(Zhao Lijian)報道官は11日、新疆ウイグル自治区政府の協力に感謝するのは「ごく普通のこと」だと述べて、「一部のいわゆる人権団体」による批判を一蹴。さらに、中国系米国人である主演女優の劉について、「現代のムーラン」であり、「中国の真の子供」と称賛した。

 映画チケット販売サイト「猫眼電影(Maoyan)」によると、公開初日の午後までの国内の興行収入は約4100万元(約6億3600万円)だった。

 しかし、多くの人がすでにネットの配信サービスで視聴している同作に対しては、大手映画レビューサイト「豆弁(Douban)」に厳しいレビューが多く寄せられており、10段階評価で4.7の評価にとどまっている。原作との違いや新しいストーリー展開を嫌う感想や、アクションシーンを批判する意見もある。

 こうした騒動の中、中国版ツイッター(Twitter)の「微博(ウェイボー、Weibo)」では、11日に「ムーラン」のハッシュタグで検索しても結果が表示されず、このハッシュタグは使用できないようになっているとみられ、また、一部の国営メディアは、この映画についての報道を避けるよう指示されていると思われる。(c)AFP