【10月18日 AFP】「パキスタンの女性は本当に、本当に強い。私たちは声を上げている。ただ、その声を生かせる場所が十分にないだけ」。そう語るカンワル・アーメド(Kanwal Ahmed)さん(31)の元へは、約26万人もの女性たちから相談が寄せられる。アーメドさんは現状を変えようと固く心に誓っている。

 アーメドさんがフェイスブック(Facebook)で運営している女性限定のオンライングループ「ソウルシスターズ・パキスタン(Soul Sisters Pakistan)」では、セックス、離婚、家庭内暴力といったこれまでタブーとされてきたトピックが自由に論じられている。

 保守的なパキスタンでは、女性がプライベートな悩みを話せる場所がほとんどない。アーメドさんは「女性が攻撃や嫌がらせ、裁きなどを恐れずに本当にオープンになれる場にしたかった」という。会員たちは、妊娠中の体の状態から心の健康、身体イメージの悩み、生殖に関する権利などの問題をオープンに話せると語っている。

 2018年、フェイスブックはSNSを活用して他者をサポートしている「コミュニティリーダー」115人の一人にアーメドさんを選出した。6000人の候補から選ばれたアーメドさんは、プロジェクトをさらに発展させるための補助金を獲得した。

■虐待に言い訳なし

 グループ内で最も熱く語られるトピックの一つは、ドメスティックバイオレンス(DV)だ。男性社会のパキスタンでは日常的によくある問題だ。

 独立系人権団体「パキスタン人権委員会(Human Rights Commission of Pakistan)」と医学誌「パキスタン・ジャーナル・オブ・メディカル・サイエンス(Pakistan Journal of Medical Sciences)」のデータによると、パキスタンでは女性の90%が家庭で何らかの虐待を受けた経験を持つ。

 アーメドさんによると、たとえ妻が夫による虐待の事実を他の家族に打ち明けたとしても、多くの人が深刻に捉えないという。「女性の方が繊細すぎると言われたり、妥協しろと言われたりする場合が非常に多い」「女性には選択肢がない」。アーメドさんは、どんな理由があっても、女性が虐待に耐えることなどあってはならないと訴えた。

 国連(UN)によると、パキスタンでは「健康、警察、司法、社会的支援などの部門で」、女性の安全と保護を確保するサービスに適切にアクセスできない。そうした中、「ソウルシスターズ」は会員同士で、法的助言から精神的な支えに至るサポートを非公式ながら提供している。

 アーメドさんは家族の友人を乳がんで亡くしている。「恥ずかしくて自分の体に関する話を誰にもできなかった」ために、診断も治療も受けないままがんを放置した結果だった。「これは珍しい話ではない。多くの女性に起きていることだ」と彼女はいう。