【9月10日 AFP】森林火災が続く北極圏で、今年に入って排出された二酸化炭素(CO2)の量がすでに過去最多だった昨年の総排出量を上回り、大気汚染の深刻化が進んでいることが、欧州連合(EU)の地球観測プログラム「コペルニクス(Copernicus)」の報告で明らかになった。

 北緯66度以北の北極圏で制御不能となっている森林火災から2020年1月以降に排出されたCO2量は、人工衛星が収集したデータによれば、すでに2億5000万トンに上る。これは、2019年の年間総排出量の1.3倍以上に相当する。

 コペルニクス大気モニタリングサービス(CAMS)と欧州中期気象予報センター(ECMWF)の共同報告によると、北極圏の森林火災のほぼ全てがロシアで発生している。

 一部が北極圏に含まれるロシア極東連邦管区(Eastern Federal District)では、今年6~8月のCO2排出量が5億トンを超え、こちらも過去最多を更新した。

 CAMSのマーク・パリントン(Mark Parrington)上席研究員は、「北極圏の火災は6月中旬から活発化しており、規模と激しさの点で、2019年の記録をすでに上回っている」と説明した。一連の森林火災の原因は衛星画像からは分からないが、初夏に発生した火災の多くは、冬の間くすぶっていた昨年の火災の残り火が再燃した「ゾンビ火災」だと考えられるという。

 シベリア(Siberia)では今年1月以降、広範囲で異常な高気温が続き、土壌の湿度も低下している。地球温暖化によるとみられるこうした気象条件が、森林火災の延焼拡大につながっている。

 コペルニクス気候変動サービス(C3S)の責任者カルロ・ブオンテンポ(Carlo Buontempo)氏は先月、シベリアや北極圏では前年比で気温が大きく変動する傾向があるとはいえ、今年の暖かさは異常だと指摘。「心配なのは、北極の温暖化が世界のどの地域よりも速く進んでいることだ」と述べていた。(c)AFP