【9月1日 AFP】タイの政府調査委員会は1日、エナジードリンク大手「レッドブル(Red Bull)」の共同創業者の孫が起こしたとされるひき逃げ死亡事件について、最初から最後まで国民の「不信感」を招き、捜査の全過程が「不誠実」だったと発表した。

 ウォラユット・ユーウィッタヤー(Vorayuth Yoovidhya)容疑者(38)は2012年、首都バンコクで高級車のフェラーリ(Ferrari)を運転中に警察官をひき逃げし、死亡させたとみられていた。しかし7月になり、ウォラユット容疑者の訴追が取り下げられ、一般市民の激しい怒りを招いていた。

 同容疑者は2017年にプライベートジェット機で国外に逃げたが、訴追が取り下げられたことで帰国するのではないかと考えられていた。

 だが、ツイッター(Twitter)で「#BoycottRedBull(レッドブルをボイコットせよ)」のハッシュタグがトレンド入りするなど市民から批判が相次いだことから、警察は「捜査チームを設置した」と方針転換を発表していた。

 また、プラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)首相も調査委員会を設置。今回、全捜査過程が「違法」だったと結論付けた。

 ウィチャー・マハークン(Vicha Mahakun)委員長は報道陣に対し、「この事件の捜査は欠陥があった」「不誠実で、事件をなくそうとする陰謀が行われた」と述べた。

 富裕層と長年近い関係にあるプラユット首相は、レッドブルの事件はタイの法制度と司法制度に疑念をもたらしたと指摘。「警察、検事、政界の人間が関与している」とし、関係者に「法的、倫理的処分を行う」と述べた。

 タイ警察は8月末、ウォラユット容疑者の新たな逮捕状を取ったと発表していた。

 米経済誌フォーブス(Forbes)によると、ユーウィッタヤー一族の純資産額は202億ドル(約2兆1400億円)に上り、タイの長者番付で2位となっている。

 ウォラユット容疑者の事件をめぐっては、訴追取り下げのきっかけとなる証言を行った目撃者が先月、交通事故で死亡している。(c)AFP