■もう一つの隕石グループ

 もう一つの隕石のグループ、頑火輝石(エンスタタイト)コンドライトは地球の岩石と組成がもっと近く、酸素、チタン、カルシウムなどに似た同位体を含んでいる。しかし、エンスタタイトコンドライトは太陽の近くで形成されるため、地球に豊富に存在する水の主要因であるとするには乾燥しすぎていると考えられていた。

 これが真実かどうかを検証するために、ピアーニ氏とフランスの岩石学地球化学研究所(CRPG)の同僚らは質量分析法を用いて、13個のエンスタタイトコンドライト中の水素含有量を測定した。その結果、エンスタタイトコンドライトには十分な水素が含まれており、地球に少なくとも現在の海の3倍の水量を供給できる可能性があることを発見した。

 また、天体ごとの水素含有量の相対的比率が大きく異なることから、研究チームは二つの水素同位体も測定した。それをDNA照合したところ、「エンスタタイトコンドライトの水素同位体の組成が、地球のマントルに貯蔵されている水の組成に似ていることが分かった」とピアーニ氏は述べた。

 さらに、海洋の同位体組成は、エンスタタイトコンドライト由来の水を95%含む混合物と一致することが明らかになった。これは地球の水の大部分をエンスタタイトコンドライトに求めることができるさらなる証拠だ。

 ピアーニ氏は今回の研究について、彗星のような外的要因によって地球に後から水がもたらされた可能性を排除するものではないが、エンスタタイトコンドライトが地球形成時の水収支に大きく貢献していたことを示唆するものだと補足している。

 米航空宇宙局(NASA)の惑星科学者アンヌ・ペリエ(Anne Peslier)氏は論文の付随論説で、「このパズルに重要かつエレガントな要素をもたらした」研究だと評した。(c)AFP/Issam AHMED