【11月7日 AFP】ベトナム人アーティストのグエン・ティ・ハー・アン(Nguyen Thi Ha An)さん(28)は目を細めて集中し、フォーの入ったわんに赤唐辛子を添える。わんの大きさは、硬貨よりかろうじて大きい程度だ。これは、アンさんが多くの時間を注いでいるミニチュア粘土細工を仕上げる様子だ。

 建築学科出身のアンさんが食品のミニチュアを作り始めたのは1年前。ベトナム料理の世界的人気の高まりを、ひともうけできる機会と捉えたのだ。

「ベトナム料理にはそれぞれ、独特の美しさがあります」。アンさんは、ピンセットで「バインミー(ベトナム料理のサンドイッチ)」の横にネギをそっと置きながら、AFPに語った。「これらのミニチュアが、人々がその美しさを見る助けになればいいなと思います」

 アンさんは、ミニチュアにはそれぞれ難しい箇所があると言う。「おわんは汚れがなく、整った形でなければいけません。でも、ネギには質感を伝えるために、筋を入ないといけないんです」

 アンさんのアシスタント(21)も、この仕事はあらゆる段階で細心の注意を払う必要があると同意する。「本物の食べ物だと思わせなきゃいけないんです」

 ミニチュアは粘土9割、液体プラスチック剤1割で作られており、一つの作品の制作には最大で5日かかる。販売価格は、最高80ドル(約8400円)にのぼる。

 アンさんは今後、伝統的なオープンバーで味わえるベトナムコーヒーやビールなどの飲み物をモチーフにした作品にも手を広げるつもりだ。

 このニッチな工芸品を追求するため、より安定したかもしれない建築のキャリアをあきらめたアンさんだが、正しい選択をしたと信じている。

 できるだけ良い仕事をして、「より多くの人がベトナム文化の美しさを知る手助けをしたい」とアンさんは話した。(c)AFP