【9月3日 AFP】新型コロナウイルスへの対策として実施されたロックダウン(都市封鎖)がインドの映画界「ボリウッド(Bollywood)」の大スターたちに与えた影響は限定的だったが、業界の大多数を占める特別な技能を持たない低賃金労働者にとっては、終わりの見えない失業と飢え、そして住む家を失うほどの大きな打撃となった。

 ロックダウン以前、撮影現場でのお茶出しといった雑用を担当する「スポットボーイ」として働いていたファヒム・シャイク(Fahim Shaikh)さん(23)は、1日当たり800ルピー(約1150円)を稼いでいた。しかし、ボリウッドが製作を中止した今年3月、シャイクさんは家賃を払えなくなってしまった。

「あちこちをさまよって見知らぬ人に助けを求め、カフェの外で寝ていた」とシャイクさんはAFPの取材で語った。

 スターを夢見る多くの人と同様、シャイクさんも演技経験を積むためにムンバイにやってきた。しかし、その夢はインドで最も高価な都市に住み続けるための単調な仕事にいつしか取って代わられることとなったという。

 大きく成功したボリウッドの映画業界は、撮影現場での人数制限を含め、厳しいルールの下ではあるが暫定的に元の状態に戻りつつある。

 しかしこれは、シャイクさんのような人に回ってくる仕事の件数やその頻度が激減することを意味する。

■不平等

 ロックダウンは、インド社会に存在する異常な不平等さを浮き彫りにした。裕福な市民は安全な家にこもることができたが、出稼ぎ労働者の多くは集団移動を余儀なくされた。彼らが移動する様子を裕福な人々はテレビやスマートフォンでながめていたのだ。

 持てる人と持たざる人との分断は、ボリウッドではさらに明らかになった。各地を飛び回るスターたちは数多くのエキストラと仕事をする一方で、スポットボーイや他の若手製作者らは華やかな業界の隅にひっそりと存在しているのだ。