【8月12日 AFP】香港国家安全維持法(国安法)が施行されてから一か月以上が経過する中、香港の民主化運動に対する中国政府の取り締まりが急速に推し進められている。

 直近では、中国政府を公然と批判してきた香港メディア界の大物で、民主派の香港紙「蘋果日報(アップル・デーリー、Apple Daily)」創業者の黎智英(ジミー・ライ、Jimmy Lai)氏や著名な民主活動家の周庭(アグネス・チョウ、Agnes Chow)氏が、国家安全維持法に違反した容疑で10日に逮捕されている。周氏は11日夜、黎氏は12日にそれぞれ保釈された。

 新法では、国家転覆や分裂、テロ活動、外国勢力との共謀などが犯罪行為と位置付けられており、最高刑は終身刑となっている。

 国安法が導入されて以降、香港に起きた変化を以下にまとめた。

■抑圧された抗議運動

 国家安全維持法が施行されると、抗議運動はすぐに影をひそめた。これは新法の主要目的の一つだった。

 最初の逮捕者は香港の中国返還記念日である7月1日に出た。新法施行の翌日だ。

 新法に反発する群衆は警察による取り締まりの対象となった。身柄を拘束された人の多くは、香港の独立や民主化のスローガンを掲げたり叫んだりしていた。

 また昨年の抗議運動の際に登場した「レノンウォール」の多くも撤去された。これは、民主化を訴える作品やメッセージを集めて壁に張り付けたもので、多くの店やカフェ、道路沿いに設置されていた。

 新法が施行された7月1日以降、大規模な抗議行動は発生していない。

■政治団体の解散、反対者の脱出

 国家安全維持法が施行される数時間前、香港の民主派政治団体「香港衆志(デモシスト、Demosisto)」が解散を発表した。同団体は、黄之鋒(ジョシュア・ウォン、Joshua Wong)氏をはじめとする学生活動家らが参加する団体だった。中心メンバーで元議員の羅冠聡(ネイサン・ロー、Nathan Law)氏はその後、英国に渡っている。