■市場の「正しい側」

 オーストラリアのフリンダース大学(Flinders University)のシンガポール専門家、マイケル・バー(Michael Barr)氏は、「シンガポールは常に世界の市場、特に米国にとって正しい側に位置するよう心掛けてきた」と説明した。

 香港では、多くの人が国安法に怒りと失望を表した。欧米諸国も、中国政府は香港が大切にしてきた自由を剥奪したと批判を強めている。多くの国は、法制度への懸念を理由に香港との犯罪人引き渡し条約を停止した。

 バー氏は「中国政府は、香港を市場から締め出すよう米国を仕向けている」と述べた。

 アナリストらは、外国企業は今後、法の支配という点では香港よりもシンガポールの方が安全だと思うようになるだろうと指摘する。香港国安法が、香港と中国本土の間に存在していた法律上の防御壁を崩壊させたためだ。

 豪シンクタンク、ローウィー研究所(Lowy Institute)の政治アナリスト、ベン・ブランド(Ben Bland)氏は、「誰が中国の国有企業や有力な民間企業を相手に訴訟を起こすというのか」と述べた。一方、シンガポールは、国際仲裁ハブの一つとして、その地位を確立している。

 多数の企業が香港から撤退し、シンガポールが利益を得るのではないかとの臆測が広がっているが、企業の香港撤退の兆候はまだほとんどみられない。これについてブランド氏は、「多数の企業が洪水のように撤退するのではなく、水がしたたるように少しずつ撤退する」としている。「だが、中国が介入を強めれば、この動きは加速する可能性がある」 (c)AFP/Sam Reeves / Martin Abbugao