【7月29日 AFP】シンガポールは民主主義が制限されている代わりに、生活水準は高く、安定しており、ほとんどのシンガポール人がこの状態を受け入れている。アジアの金融ハブとしてライバル関係にあることで知られる香港は、中国が統制を強める中、シンガポールモデルを模倣すればいいのではないかとの声が上がっている。

 香港国家安全維持法(国安法)の施行により、香港市民の自由は制限され、長年比較されてきたシンガポールとの対比が浮き彫りになっている。

 この法律を支持する人々は、香港ではしばしば暴力的なものに発展する民主化デモが何か月も続いたことから、安定性を取り戻し、企業の信頼感を保つ必要があると主張している。

 一方、反対派は香港が、法律や規制の透明性が低い中国の多くの大都市のクローンになってしまえば、企業の信頼感は徐々に失われると指摘する。

 香港の弁護士、アントニー・ダピラン(Antony Dapiran)氏は、中国による支配は投資家の信頼を維持するために必要な香港の自治権を奪っていると指摘する。

 香港の民主派デモに関する著作があるダピラン氏は「シンガポールは、中国共産党の介入の対象となっていない」「シンガポールは主権国家であり、中国政府の利益とは性質も規模も大きく異なる国家利益のために行動している」とAFPに語った。

 昨年、香港を揺るがした民主派デモを受け施行された国安法は、国家転覆、暴動、テロ、外国との共謀を取り締まりの対象としている。

 シンガポールでも、暴動や侮辱罪などを取り締まる同じように厳格な法律が存在するが、それでも繁栄していると擁護する人もいる。例えばシンガポールでは、中心部の公園の一角を除き、当局の許可なしにデモを行うことは違法となっている。

 このような厳格な法律は人権団体から批判されているが、国内ではおおむね容認されており、世界からも詮索はされていない。