【7月21日 東方新報】新型コロナウイルス感染症で打撃を受けた中国の国際貿易が回復し、安定成長を取り戻してきた。中国税関総署によると、今年上半期の輸出入総額は前年比3.2%減の14.24兆元(約218兆円)にとどまったが、内訳を見ると、輸出は4月から3か月連続でプラス成長を遂げている。6月の輸出は前年同月比4.3%増、輸入は同6.2%増で、今年初めて輸出入ともにプラス成長を実現した。

 復調に転じた背景には、中国国内で新型コロナウイルスの抑制におおむね成功し、企業活動や工場生産が全面的に早期再開したことや、国内消費市場で海外製品の需要が徐々に回復したことがある。特に主要農産物の輸入は大幅に増えた。また、マスク、医薬品、医療機器といった新型コロナ対策関連の輸出が大幅に増加。ノートパソコンや携帯電話など「在宅経済」関連商品の輸出も増えた。国境を越えた電子商取引も急速に成長した。

 国際的な観点から見ると、アジア・ヨーロッパ・アフリカを結ぶ巨大経済圏構想「一帯一路」(Belt and Road)を通じて貿易パートナーが多様化したことも、中国の国際貿易に重要な役割を果たしている。とりわけ目立つのは東南アジア諸国連合(ASEAN)だ。今年上半期、中国とASEANの輸出入総額は前年同期比5.6%増の2.09兆元(約32兆円)に達し、中国の対外貿易総額の14.7%を占めた。 ASEANは欧州連合(EU)に代わり中国にとって最大の貿易パートナーとなった。

 国際貿易の主体としては中国の民間企業が外資企業を上回り、主力となっている。今年上半期の民間企業の輸出入総額は6.42兆元(約98兆円)で、対外貿易全体の45.1%を占める。

 ただ、これで中国の国際貿易に「春」が到来したとは限らない。世界経済は今も先行きは不透明であり、安定成長のために3つのポイントに注意する必要がある。

 第一に、新型コロナウイルス感染症が長期化・常態化する前提に立つことだ。マスクや消毒液、呼吸器といった感染予防製品や医療機器などへの高い需要が引き続き、「ステイホーム」を前提にした食事、娯楽、ショッピングなどの市場もさらに成長する。

 第二に、政府が安定した国際貿易環境を保証すること。中国政府は今年上半期、減税と各種手数料の引き下げの強化、国際貿易での信用貸付の増加、輸出税の払い戻し、国際電子商取引の後押し、中国-欧州間の貨物列車の増発、多くの国との出入国手続きのスピード化を実行してきた。今後もこうした政策を強化し、国際貿易の回復力を高める必要がある。

 第三には、国際協力を進め、中国国内の市場開放を続けることだ。外資企業の参入制限・禁止事項を列挙した「ネガティブリスト」を削減し、市場アクセスを緩和するなどの方法で、対外開放の姿勢を継続してアピールしていく。さらに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)をはじめ二国間や多国間の自由貿易協定を結び、貿易や投資の自由化と円滑化を促進する必要がある。(c)東方新報/AFPBB News