【7月19日 AFP】新型コロナウイルスが南アフリカの子どもたちに与える影響は、教育機会の損失にとどまらない──このパンデミック(世界的な大流行)は、貧しい農村地域の子どもたちから日々の温かい食事をも奪ってしまった。

 東ケープ(Eastern Cape)州シトロモ(Sitoromo)にある中等教育校のタバン・レソソ(Thabang Letsoso)校長は、「ここに通う生徒たちの中には、(一日の主な食事として)給食を当てにしている子どももいる」と語る。

 新型ウイルスの流行前は、政府主導の栄養プログラムの一環として、公立学校の生徒約900万人が給食を食べていた。

 レソソさんは、「3月以降、生徒らは自宅で待機していた」「一部の生徒は腹をすかせたまま眠りについていたと思う」と不安気に話した。

 南アでは3月、新型コロナウイルス感染拡大防止策として外出禁止令が出た。閉鎖した学校は先月から段階的に再開しているが、一部はまだ閉鎖されたままだ。生徒368人が通うシトロモの学校にとっては、少なくとも4か月間の閉鎖となった。

■学校閉鎖措置の大きな影響

 地域の農場で働くシクニヤさん(55)は、12歳の孫娘が学校に戻るのを心待ちにしていたという。

 その理由は、「学校から帰宅すると(孫娘の)おなかがすいていることはない」ためだ。

 農場で働いてはいるが、得られる収入はごくわずかで「孫娘を養えるほどの収入はない」と話すシクニヤさんは、「少なくとも学校では朝食を取ることができる」と続けた。

 一部の医師からは、学校の閉鎖の方が新型ウイルスよりも及ぼす影響が大きいとの意見も上がっている。しかし東ケープ州では、過去1か月間に150校以上から新型コロナへの感染が報告されている。そうした状況を受け、保護者の間では安全性への懸念が高まっているのも事実だ。

 シトロモの学校でも、教師の感染が確認されたことを受け、2週間の閉鎖措置が取られた。閉鎖から2週間が経過し、ようやく学校は再開したが、保護者らは不安を払拭(ふっしょく)できないでいる。

 その理由の一つは、子どもたちが通う学校の環境そのものにある。昨年、原因不明の火災が起きて校舎が一部焼失し、使える教室が減ってしまったのだ。370人近くいる生徒は、残った校舎で授業を受けることとなったが、十分な広さが確保できていないとして教師らからも心配する声が上がっている。(c)AFP