【6月24日 AFP】中南米は現在、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の中心地となっているが、アンデス山脈(Andes)に住む人々はその他の地域の人々より抵抗力が強いようだ。

 アンデス山脈は世界最長を誇り、北はベネズエラとコロンビアから、南はチリとアルゼンチンのパタゴニア(Patagonia)に至るまで7000キロにわたり広がっている。山脈の標高は平均4000メートル、最高峰のアルゼンチン・アコンカグア(Aconcagua)は標高およそ7000メートルだ。

 しかし、中南米においてブラジルに次いで感染者の多いペルーでは、古代インカ(Inca)帝国の首都だったクスコ(Cusco)など、標高3000メートル以上の地域で確認された感染者は国内全体のわずか10%にすぎない。

 ペルー医科大学(Medical College of Peru)の公衆衛生委員会代表のアウグスト・タラソナ(Augusto Tarazona)氏は、「クスコやワラス(Huaraz)、カハマルカ(Cajamarca)といった都市で感染者を確認しているが、実際に数は(他の地域よりも)少ない」と指摘。「高地に位置するこれらの都市では感染が最小限に抑えられており、致死率もゼロに近い。これに私たちは注目している」と述べた。

 また、同様のことが隣国ボリビアでも言え、感染者の多くはサンタクルス(Santa Cruz)やベニ(Beni)県といった東部の低地に集中している。

 ボリビア保健省の当局者も「ラパス(La Paz)などの高地では、感染率は大幅に低い」と述べている。

 また、ペルー・ボリビア両国の公式統計からもこの傾向が裏付けられる。

 密林地域に位置するペルーのロレト(Loreto)州の感染者はおよそ8000人、死者は321人である一方、同州より人口が1.5倍多いクスコでは感染者数はわずか1500人、死者は13人にとどまっている。致死率はロレト州で4%であるのに対し、クスコでは0.87%だ。

 ボリビアでもサンタクルスの感染者は1万3000人である一方、ほぼ同じ人口のラパスの感染者は1400人以下にとどまっている。

■低酸素が影響?

 現時点において、アンデスに住む人々が新型コロナに対して強い免疫を持っているということを科学的に証明するものは一切ないが、一部の専門家は、低酸素の環境で暮らす人々の呼吸器系が鍵であると主張している。

 ペルーの感染症専門医であるエドゥアルド・ゴトゥソ(Eduardo Gotuzzo)氏は、酸素の不足した状態にある人々にはウイルスの侵入口として作用するアンジオテンシン変換酵素(ACE)が少ない可能性があると指摘。酸素濃度の低い環境に住む人々の体内では、ウイルスが「入り込めるポイントが少なく、感染を抑えられる」可能性があるという。

 タラソナ氏によれば、アンデスの高地に住む人々は異なるACE受容体を持っており、また低い酸素濃度に適応した呼吸器系が体内に何らかの形で影響を与え、体内にウイルスが潜伏しないようにしているという。

 一方で、紫外線が高地において天然の消毒剤としての役割を果たしている可能性を示唆する研究結果もある。

 ペルーの呼吸器専門医、カルロス・イベリコ(Carlos Iberico)氏は「紫外線量は高地で確実に増えるため、ウイルスが生存しにくくなり、ウイルス量が少なくなると言える」と述べている。

 だが、こうした説に誰もが納得しているわけではない。ボリビア保健省の当局者は、紫外線に効果があるとする仮説によってウイルスがさらに拡散されることになりかねないと懸念を示している。(c)AFP/Enresto Tovar with Gerardo Bustillos in La Paz