【7月1日 東方新報】中国の伝統文化を継承する「文化と自然遺産の日」(毎年6月の第2土曜日)に当たる先月13日、上海市では78件の歴史的建築物が無料公開された。その中で最も注目を集めたのが、清朝の時代に建てられ、今年初めて公開された「商船会館」だ。上海の海運の振興を支えた会館が300年余の時を超えて蘇り、成長著しい上海経済の新たなシンボルになろうとしている。

 商船会館は清の康熙帝が統治していた1715年、上海と周辺の沙船(ジャンク船)運送業者たちが出資して着工され、当時の上海で最大の豪華な建物となった。荷物の輸送料や貿易で紛糾した時は商船会館が調整する役割を果たし、上海の市場を左右する存在だった。集会や文化交流、娯楽の場としても使われ、「海納百川」(海が無数の川を受け入れること)という上海の都市精神を象徴してきた。

 船首がとがって船尾が広く、船底が平たんな沙船は上海流域の河川輸送の主力だったが、19世紀後半に欧米列強の進出が本格化し、速度が速く安全で低コストな汽船が登場すると、商船会館の役割は影を潜めていく。

 建物の存在は次第に忘れられ、他の建物に埋もれてしまう時期が続いたが、1987年に上海市が第1級文化財に指定し、2019年に改修工事が始まった。60人近い伝統工芸職人が参加し、「修旧如旧」(昔の状態に戻すように修復する)という理念に基づき、工事が行われた。

 改修を担当した緑地ホールディングスによると、彫刻が施されたレンガや門の櫓(やぐら)、大殿、舞台、乾隆帝の石碑を保存しつつ、会館としての機能も復活させた。

 現在、上海経済の成長は著しく、今年3月に発表された世界金融センター指数で、上海はニューヨーク、ロンドン、東京に次いで世界4位にランクイン。長らく「世界三大金融センター」の一つと言われた香港も追い抜いた。一方で、長期化する米中経済摩擦や新型コロナウイルスの拡大など、不安材料も増えている。

 商船会館は上海の金融街に位置しており、中国メディアは「かつての上海の繁栄を象徴するランドマークの復活は、市民に誇りをもたらすと同時に、金融街の新たなシンボルとなる。商船会館は今後の上海経済の発展の目撃者となるだろう」と報道している。永い眠りから目を覚ました商船会館は、上海経済の「守り神」の役割を果たすことになりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News