■GPSとドローン

 サーミ人はスウェーデン北部、ノルウェー、フィンランド、ロシアの一帯で何世代にもわたってトナカイを遊牧してきた。8万〜10万人とみられる人口の多くが北極圏に住んでいる。スウェーデンのサーミ議会(Sami Parliament)は、約2000人のサーミ人が25万頭の動物の遊牧で生計を立てていると推定している。

 スウェーデンでは食肉用、また皮や角の利用を目的とした動物の遊牧が認められているのはサーミ人に限られている。

 フィエルストロームさんとビクランドさんは、餌が確保できる移動ルートを2か月かけて交代で探し回る。夏の移動では、高速道路や風力・水力発電所に出くわすことも増えた。

「このところの最大の問題は気候変動だ」とフィエルストロームさんは嘆く。

 二人は毎年、首都ストックホルムから北へ800キロ離れたディカナス(Dikanas)村から、ボスニア湾(Gulf of Bothnia)沿いの町エルンシェルツビク(Ornskoldsvik)近くの平原にトナカイを移動させる。

 まず、トナカイをトラックで運び、解放した後はスノーモービルで追いかけ、首輪につけたGPSを使って追跡する。

 凍えるような寒さの中、トナカイが雪に覆われた森に消えて行くのを確認すると、ビクランドさんはドローンを飛ばした。降雪がひどくてスノーモービルでトナカイを追えない時に、ドローンで追跡しているのだ。(c)AFP/Tom LITTLE