【6月16日 AFP】(更新)新型コロナウイルス感染症の重篤患者の3分の1が、ステロイド薬「デキサメタゾン」の投与により一命を取り留めたとの治験結果が16日、発表された。同感染症との闘いにおいて「大きな突破口」となる可能性があると、期待が高まっている。これを受けて英政府はきょうから投与を開始することを明らかにした。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)のチームが率いる研究者らは、広く利用されているデキサメタゾンを重篤患者2000人超に投与。

 暫定結果によると、人工呼吸器がなければ呼吸できなかった患者らの致死率は、同薬の投与により35%低下。また酸素吸入を受けていた患者では、致死率は20%低下したという。

 研究チームによると、同薬を毎日服用することで、人工呼吸器使用患者の8人に1人、酸素吸入のみの患者の25人に1人が命を取り留める可能性があるという。

 今回の治験では、同薬を投与しない患者4000人を対照群としていた。

 同大のピーター・ホービー(Peter Horby)教授(新興感染症)は、「デキサメタゾンが、新型コロナウイルス感染症において生存率を向上させることが示された最初の薬となった。これは非常に歓迎すべき結果だ」と指摘。

「デキサメタゾンは安価で在庫があり、世界中で救命のためにすぐ使用できる」と述べた。

 これを受けて英国のマット・ハンコック(Matt Hancock)保健・社会福祉相は同日、新型ウイルス感染症患者へのデキサメタゾン投与をすぐに開始すると表明。同薬に効果がある可能性が最初に明らかとなった3か月前から、備蓄を開始していたことを明らかにした。

 また「国民保健サービス(NHS)による新型ウイルス感染症の標準治療に、きょうの午後からデキサメタゾンを含めるよう、NHSと協力している」と述べた。(c)AFP