【6月11日 AFP】警察改革を求める声が全米に広がっている。だが、強力な労働組合と保護的な法律に支えられて長年、比較的罪に問われることなく行動してきた警察の最悪の体質を変えることは、困難をきわめる挑戦となりそうだ。

 先月25日、米ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で、アフリカ系米国人のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが手錠をはめられ、白人警官に首を地面に押さえつけられて死亡した事件を受け、各界、各州、そして連邦議会においてさえ警察の暴力、とりわけ黒人に対する暴力をなくす発議が相次いでいる。

■主観に委ねられた銃器使用の基準

 フロイドさんの死は、警察による致死的な武力行使というくくりに分類される出来事だ。

 警察による殺害事例をまとめたデータベース「マッピング・ポリス・バイオレンス(Mapping Police Violence)」によると、2019年に米国の警察によって殺害されたのは1098人で、その4分の1が黒人だった。だが、人口全体に占める黒人の割合はわずか13%にすぎない。

 これと比較して、フランスの警察による殺害数は毎年20人前後だ。

 人口の違いがあるにせよ、米国の数値が膨大である一因は、銃の入手が広く可能なことだ。それが、警官が直面する危険をも高めている。

 米国法執行官記念基金(National Law Enforcement Officers Memorial Fund)によると、昨年は135人の警官が職務中に死亡している。

 米国の警官は、自己または他者への差し迫った危険があると「合理的」に予想される際には、銃器を使用する権利を与えられている。

 これは主観的な基準であり、その範囲の広さからみて、警察が過剰または目に余る職権乱用で罪を問われることは、非常にまれだ。

 警察の各種契約を調査する運動「Checkthepolice.org」によれば、警察は労組の契約にも守られており、それにより裁判に持ち込むことはより困難となっている。

 フロイドさんの首を膝で9分近く押さえつけた元警官のデレク・ショービン(Derek Chauvin)容疑者は、こういった契約のおかげで、これまで18件の職権乱用の報告があったにもかかわらず、約20年にわたり警官を続けることができた。

■消極的な検察と陪審員

 元警官で現在はオハイオ州のボーリング・グリーン州立大学(Bowling Green State University)のフィリップ・スティンソン(Philip Stinson)教授(刑事司法学)によると、過去15年間で、職務中に人を殺害し、重罪殺人の罪に問われた警官はわずか110人で、殺人で有罪となったのはわずか5人だった。

「検察は日々警官と仕事をしなければならないため、警官の訴追に消極的だ」とスティンソン氏は指摘する。

 また、警官を相手に裁判で勝つことは難しい。というのは、陪審員は危険な状況で発砲するという警官の一瞬の判断に疑念を抱くことに、「非常に消極的」だからだ。