■明らかに飢えが理由

 猟師のパットさん(仮名)が、1頭で行動していた雄のインパラの両目の間をライフルで撃ち抜くと、インパラは地面に倒れ込んだ。

 パットさんはたばこに火をつけ、家族が所有する200ヘクタールほどの土地を見渡す。ここは観光客がにぎやかな都会から離れて休息し、ロッジの窓から野生動物を目にして感動する場所だ。

 パットさんの父、コーンラッドさん(仮名)は、地元の人々が飢えないよう、普段の倍以上となる100頭のアンテロープを狩ることに決めた。

「ロックダウンの開始直後から問題が表面化した」とコーンラッドさんは語る。近隣の農園では、動物が食用目的で密猟されていると付け加えた。飢えが理由なのは明らかだとコーンラッドさんは指摘する。「この町は既に危うい状況にあった。新型ウイルスの発生がそれに拍車をかけた」

 33人いた従業員のうち、現在も働いているのは4人だけだ。コーンラッドさんは全員に給料を払い続けているが、解雇の予定があることを認めた。「われわれはかなりの打撃を受けた」「売り上げはほとんどゼロだ」と語った。

 南アフリカでは、国内観光の再開は12月を予定しているが、外国からの観光客の受け入れは2021年になる見通しだ。

 ロッジに戻ったパットさんは観光客がいなくなって良かったたった一つの点は、野生動物の狩りに余裕ができたことだと語る。「観光客は狩りを好まない」とパットさん。「普段はこそこそしている…今は堂々とできるようになった」 (c)AFP/Sofia CHRISTENSEN